第三話「倫敦の吸血鬼 後編」5
「……ならば、俺が責任を持たねばならない。俺が貴様を滅ぼす!」
玉兎は予め用意していた火の術式を組み上げる。
彼の周りに、火炎太鼓のように炎が舞う。
「バカめ。私の胎の中で呑気な事ね!」
霧が吹き上がった。
このフリート街を覆うだけの大規模な霧が収束している。
「この霧は……!」
霧は渦を巻き、巨大な腕へと姿を変えた。
玉兎もよけようとしたのだが、その動きもまた、蜘蛛の巣のようにまとわりつく周囲の霧に阻まれる。
「この霧こそ私の体の一部! 吸血鬼の能力、『体を霧に変える』力をご存じない? アハハハハ!」
「バカな……!」
巨大な霧の腕は、炎をかい潜り、玉兎を掴みあげた。
一息に握り潰しこそしないが、苦しむよう強力に締め付ける。
その苦悶の顔を覗き込むよう、クローデットが浮遊しながら近づいた。
「……これほどの規模の霧だと……貴様……金烏の符を持っているな……!」
「さぁね?」
「誰か裏で糸を引いている者がいるはずだ……八〇年も経って動き出したのには理由があるはずだ……! 誰が貴様に力を与えた……!」
「あんたが考えるべきは、トッドへの懺悔。それだけ。それ以外は考える必要はないんだよ!」
「ぐああああああ!」
霧の腕が強く握りしめられる。
べきべきと骨が砕ける音が響く。
「あははははは! いい音! もっと、もーっと苦しめ!」
大笑いするクローデット。
その背中が、大きく切り裂かれた。




