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第二話「倫敦の吸血鬼 前編」7

 スコットランドヤードはフリート街より南西にあり、フリート街に戻ろうとすれば、その途中のキングス・カレッジ・ロンドンの前を通るのも自然であった。

「ぎょ、玉兎……よかった……」

 周囲の人間も、ヴェロニカの絶叫に驚いていたが、痴話げんかとでも思ったのか、めいめい視線を外して行く。

「その驚きよう……何かあったな?」

「う、うん!」

「……来るなと言っただろう」

「う……そ、それより! 今あっちに化け物がいたんだ!」

「化け物だと……?」

 玉兎の視線が、霧に包まれるフリート街に向く。

「絶対あれは殺人鬼だよ! 私の後を追いかけて来たんだ。こっちだよ! 来て!」

「おい! 待てと言ってるだろう!」

 玉兎の止める声も聞かず、ヴェロニカは走り出した。

 慌てて玉兎はその背を追う。

 再び霧の中に突っ込み、フリート街へ向かって行く。

 やがて、王立裁判所前の記念碑に辿り着いた。

 記念碑の上のドラゴンの像が、霧に投影されて大きな翼の影を映し出している。

「この辺りで見かけたんだけど……」

「……お前は本当に人の話を聞かないな。待てと言っただろうが」

「大丈夫だって。玉兎が守ってくれるんでしょ?」

「そんな話をした覚えは無い。……それより、その殺人鬼とやらはどんな姿だった?」

「ええとね、鉄仮面で斧を持ってて……」

「何……!」

 玉兎の目が丸くなる。

「それは……」

「あーーーっ! アイツ!!」

 ヴェロニカが鼓膜が破れんばかりに絶叫し、玉兎の背後を指さす。

 そこには、処刑人の姿があった。

「お、お前は……!」

 振り返る玉兎。

 が、その処刑人が逆に玉兎の背後を指さした。

「はっ……!?」

 そこには、吸血鬼に首筋を噛まれている、ヴェロニカの姿だった。

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