第一話「道士と殺人鬼」11
(こんな……ところで……!)
脳裏に浮かんだのは、一人の女性。
荒れ狂う力の奔流より玉兎をかばう、その最期の姿。
「うああああああ!!」
「!?」
ヴェロニカが刀身を掴む!
炎にその手を焼かれながら、それでも離すどころか、玉兎から剣を引き抜こうと力を込める。
その炎の痛みが彼女の記憶を呼び覚ます。
ヴェロニカの脳裏には、過去の思い出が走馬灯のように過った。
「何で……」
懐かしき、娼婦の仲間たち。
年季の入った娼婦たちも多く、そもそも娼婦となるより他の無い若い者たちには、どこか母のような存在であった。
「なんだい。その火傷で客が一度もつかないからってしょげてんのかい」
一人の娼婦が豪快に笑う。
「心配いらないよ。アンタの食いぶちくらい、アタシが稼いできてやるよ!」
その笑顔が、ヴェロニカが見た彼女の最期の姿だった。
「何で殺した! 答えろおおおおおっ!!」
力づくで、剣を引き抜く!
その苛烈な姿に、玉兎は引き抜かれた痛みではなく、感嘆の声を漏らした。
「……俺に君と同じだけの……他者を思う心があったなら……あんな事にはならなかっただろう」
怒りとも異なる敵意の炎を瞳に宿したエクスカリバーが、ヴェロニカ目がけて刀を振り上げる。
玉兎は一陣の風となり、ヴェロニカを脇に抱えて後ろに飛んだ。
「だ、大丈夫なの?」
「ああ。助かった。だが心配は無用だ。俺は化け物だ」




