82話 回想:会社/突入
近隣のヨドミを見つけて破壊しながら数日が経った。
父親の会社の方も気になったが、そちらは少し後回しになっていた。
穏便に侵入する手段を見つけるためだという。
人のいない夜中だと警備があるので難しくなる。
昼間は当然ながら人がいるので迂闊に中に入れない。
何か良い手はないかとあれこれ考えてる最中だった。
それまでの時間を無駄にしないためのヨドミ破壊でもある。
前回、学校への襲撃があったおかげで、足跡を辿っていくつかのヨドミが発見されている。
それらを潰して回る事で安全性と修養値を手に入れていった。
カズヤは修行も兼ねて出来るだけ多くを回る事となった。
おかげで寝る時間を大幅に削る事になってしまった。
金曜日の放課後から日曜日の夜にかけては寝る以外はヨドミ破壊に従事していた。
おかげでレベルの方は大分上がり、一人でもかなりの化け物を相手に出来るようになった。
短期間での成長としては驚異的と言えるだろう。
「そろそろだな」
頃合いを見計らったようにノボルが言ったのはそんな時だった。
「……本当にこれでいくんですか?」
呆れながら尋ねる。
やり方は既に聞いていたが、それだけに「本当にこれでやるのか?」と疑問を抱いてしまう。
「他に方法があればそうしてるよ」
出来るなら内部の人間と通じて上手く中に入りたいところだった。
しかし、そんな伝手があるわけもない。
作るにしても時間がかかる。
最も穏便に済ませられる手段であるが、それだけに時間も手間もかかってしまう。
悠長に構えてるわけにはいかなかった。
化け物があふれてる建物を見たノボル達は、すぐさま、可能な限り急いで対処しようとしていた。
期日や〆切りがあるわけではないが、さすがに無視する気にはなれなかった。
何せ出入りしてる者達に何かしら化け物が取り憑いている。
そうでない者もいるが、会社の入ってるビルに入ってる者達のほとんどは表情が曇っている。
建物自体も周囲のものより雰囲気が悪い。
日が差していてもどことなく暗く見えてしまう。
化け物が見えない協力者達も、何となく敬遠したくなると言う程だった。
そんな所で仕事をしていて経営状態が良くなるとは思えない。
実際、父親の会社はこの三年四年で事業規模を縮小。
社員一百五十人だったのが今は五十人にまで減っている。
財務状態も最悪で、運営経営ギリギリの赤字を延々と維持してるという。
それらを調べた者達は、「よくもまあ倒産しないもんだ」と驚いていた。
そんな会社の、名ばかりの部長として必死になって奮戦してる父に、カズヤは同情よりも憐憫をおぼえてしまった。
一刻も早くどうにかしたいと痛烈に思うほどに。
だが、突入の手段については杜撰というか大雑把というか、それで成功するのかと思うようなものだった。
月曜日、学校もあるというにわざわざさぼって来たのだが。
(大丈夫なのかな……)
心配ばかりが増えていく。
父の会社も、作戦の方も。
「来たな……」
渋面を作るカズヤをよそに、助手席に座っているノボルは車から降りていく。
見れば会社の入ってるおんぼろのテナントビルにスーツ姿の男が入っていく所だった。
父の会社の社員なのか、他のテナントの者なのかは分からない。
ただ、化け物に取り憑かれてるのは確かだった。
その男と一緒にビルの中に入っていく。
至近距離で接触したので、当然境界が発生する。
それが狙いだった。
「行くよ」
一緒にワゴンに乗っていたマキも降りていく。
カズヤもその後ろに続いてビルへと向かった。
中に入るために。
(本当に大雑把だな)
これが策だというのだから呆れるやら嘆かわしいやら……となってしまう。
警備や人の目があるからこそ中に入るのが難しい。
だったらそれらに見つからないようにしよう、というのは当たり前の発想だろう。
だが、その為に化け物を利用して境界を発生させる、というのは驚愕では済まないものがあった。
確かに一般人の目にはうつらなくなる。
警備のための監視カメラなどにも記録されない。
現実から隔絶された空間になる事を利用した侵入方法だった。
夜間でも同様の事は出来るが、扉などが施錠されていたら中に入れない。
そのため、昼を狙って内部に侵入する事になった。
上手くいくかどうかも分からない、当てずっぽうな作戦である。
だが、思いの外上手くいっている。
内部への侵入は意外なほど簡単にできた。
中にも化け物がいるので、境界が消える可能性もない。
襲いかかってくるのは面倒だが、ヨドミまで誰かに見つかる心配はしないで済む。
その為、今回はかなり多くの人数がやってきている。
普段は二人か三人でヨドミの突入するが、今回は十六人。
ノボル達の仲間のほとんどが集まっていた。
そこまでする必要もないのだが、ヨドミを探す人手も兼ねている。
たいして大きくも無いテナントビルであるが、探すとなるとそれなりの手間はかかる。
それを少しでも省く為の人海戦術だった。
ノボルの父親の会社が一番あやしいのは確かだが、そこ以外に存在してるかもしれない。
そこも確かめねばならなかった。
父親の会社の入ってる階へと向かったカズヤは、鳥肌が立つほどの怖気をおぼえた。
エレベーターから出てすぐに感じるほどである。
目の前にある会社の受付の向こうがどうなってるのか、想像すらしたくなかった。
逃げるわけにはいかないが、ここから飛び出していきたくなる。
それでもkさきに進むノボルに続いて会社の中へと入っていく。
「……うわ」
予想通りであり、予想以上でもあった中の様子を短い言葉であらわしてしまった。
ノボルも続く。
「酷えな」
化け物だらけだった。
ヨドミの中というわけでもないのに。
多くても三匹から五匹くらいで集まってるものだが、ここはそれどころではなかった。
机や床の上に二十三十という数が屯している。
広いテナントスペースを用いた車内の奥にも見える。
ヨドミへの入り口も。
「こりゃ大変だ」
言いながらノボルが進んでいく。
専用のケースから刀を取り出しながら。
マキとノボルもそれに続いた。
化け物が襲ってくる。
それらを切り捨て、気力をぶつけて撃退していく。
スチール机の並ぶ事務室の中で、化け物と刃と気力がぶつかりあっていった。
他の階から駆けつけてきた仲間も加わり、社内の化け物を倒していく。
数が多いとはいえ、カズヤ達もまた多い。
ユガミならともかく、そこらをうろつく化け物相手なら引けを取る事のない者達だ。
数の優勢はすぐになくなり、社内の化け物はほとんど蹴散らされていく。
「行くぞ」
その場は他の者達に任せ、ノボルはユガミへと入っていく。
その後ろをカズヤとマキが続いた。
続きは20:00予定。
誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。




