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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
九章

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80話 回想:交戦/撤退

 開いた窓に集中していた化け物だが、さすがにそれ以外の場所からも侵入を開始する。

 集まっていた最上階の窓に集まった化け物は、そのすぐ隣の窓を破っていく。

 更に周辺の窓も破壊して中に入り、一気に数を拡大する。

 さすがにこれらを一匹ずつ相手にしていく事は出来ない。

 持ってきた塩を投げてまとめてある程度片付ける。

 核が露出したものには、そこめがけて箒を打ち下ろしていった。

 ただ、塩もそれほど多くはない。

 使いどころを考えていかねばならなかった。



(ここまでかな)

 ある程度化け物を集めたのを見計らって、その場から立ち去る。

 敵は多く、カズヤは一人だ。

 ノボルくらいの力があればともかく、これらと渡り合っていけるわけがない。

 徹底抗戦は無意味だった。

 ここから上手く逃げる事が求められていた。

 死んでは元も子もない。

 倒す事ではなく、生き残る事が今は優先だった。



 化け物が侵入している本校舎から、渡り廊下をたどって第二校舎へ。

 飛べる化け物の大半が最上階の開いた窓に集まっていたので、このあたりは静かなものだった。

 下手したらこれらにも窓を割って侵入していたかもしれない。

 そう思うと策は上手くいってると言える。

 たった一つ、窓を開けただけで随分と展開が変わっている。

 あとは化け物が上から侵入してない第二校舎から逃げ出されば御の字だった。

 その第二校舎に入って足を止め、鞄から別の道具を取り出す。

 香箱、ライター、そして線香。

 火をつけて香を焚き、香箱に入れていく。

 立ち上った煙と香りが化け物を牽制してくれるはずだった。

(塩ほど効果ないって言ってたけど……)

 それが不安ではあるが、無いより良い。

 何より、空から来る化け物にはこれしかない。

 塩をまいても、それは地上を歩くものにしか効果がない。

 逃げる時間を稼ぐためにも、香に頼るしかなかった。

 効果がどれだけ小さくても、無いのと有るのでは大きな違いが出る。

 それを信じるしかなかった。



 階段を駆け下り、塩をまき、一階へと向かう。

 もう既に化け物は侵入してるので、最後は道を切り開かねばならない。

(行けるか……?)

 疑問を抱く。

 すぐにそれを振り払う。

 駄目だと思えばどんな事でも駄目になる。

 やり遂げたいなら、それが成功したところを思い描け。

 ……ノボルの教訓だった。

 自己暗示の一種なのだろうが、失敗の事ばかり考えると失敗にいたる考えしか出てこなくなる。

 不思議なもので人間とは、自分の心理状態にあわせた考えを浮かべ、閃きを受け取る事になる。

 ノボルからの教えの一つだった。

 自身も他の誰からか教えられ、体験や教訓からそんなもんだと実感したという。

 どこまで本当かは分からないが、そんな胡散臭い事にすがりたくなるような状況だった。

(ここを突破して、外に出て、他の人と合流する)

 実に都合の良いそんな事を考えて一階へと向かっていった。

 だが、目の前に化け物が屯するのを見て、さすがにそう上手くいくとは思えなくなった。



 やたらと頭が大きく、口が裂けてる犬のような獣。

 ゆらゆらとうごめく人影。

 壁に貼り付いて接近してくる虫型。

 階段の踊り場からでもそれらが集まってるのが見える。

 見えない所にどれだけいるのかを考えると気が滅入りそうだった。

 だが、これを突破しないと先に進めない。

 体に塩をかける。

 これで少しだけ化け物の接触を軽減する事が出来る。

 そこから先は、なるようにしかならない。

 意を決して群れの中に飛び込んでいく。

 あとは野となれ山となれ、という破れかぶれな心境だった。



 化け物そのものは大した強さでもない。

 レベルが上がったカズヤからすれば大した手間もかからない。

 だが、数が多いのが難点だった。

 一匹倒しても終わらない。

 倒した所に別の化け物が入ってくる。

 塩をまいて道をつくり、開いた空間に入っていく。

 道をふさぐ化け物を箒で叩き、核を砕いたところで塩をまく。

 線香からあがる煙も化け物を防いでくれるのか、カズヤに手を伸ばしてくるものは少ない。

 それでも何匹かは攻撃をしてくるし、それらを全て防ぐ事は出来ない。

 箒にもヒビが入る。

 それでも気力を込めて化け物を薙ぎ払い、外へと向かっていく。

 外にでても化け物から逃れられるわけではない。

 だが、化け物から距離をおけば境界からは逃れられる。

 そうそう上手くいくわけもないが、今はそこに賭けるしかなかった。

 ここにいれば確実に化け物に押し切られるのだから。

 そして、外に至るまでの道が長い。

 校舎を出て校門まで走り、そこから先も逃げ続けなければならない。

 数十メートルもないがその距離が長くて遠い。

 化け物がひしめく中を突破するしかないのだから気が滅入る。

(ノボルさん、よく一人でやるよ……)

 ヨドミの中でノボルはこれくらいの数の化け物を相手にしている。

 それで退く事なく撃退していた。

 それがどれだけ大変か、自分でやってみて実感する。

 普通では出来ない。

 今のレベルでは無理だ。

 もっと強くならねばならない。

 その為にも生きてここから抜け出さねばならない。

 孤立無援の中、孤軍奮闘しながら出口へと向かう。

 全部は倒せなくてもいい。

 立ちふさがるものだけ、邪魔になるものだけを撃退出来ればいい。

 そうしなければならない対象が多い事は考えないようにして、校舎から飛び出した。

 確認はしてないが、消耗した生命や気力はかなりになるだろう。

 それでこの先を突っ切れるか分からない。

 校舎内ほど密集してるわけではないが、化け物は外にも存在する。

 上手くいくよう願いながら、校門まで走りだす。

『おい、生きてるか?』

 トランシーバーからの声に希望を見いだして。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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