79話 回想:学校内
「え?」
周りの空気が一変したのを感じた。
何だと思うが、周囲に人の姿がない。
今の今まで授業中で、教室の中には教師と生徒がいたのだが。
それらがいきなり消えていた。
すぐに何がおこったのかを察知する。
(境界?)
何度か遭遇した事で、そうなった時の雰囲気はだいたい分かるようになっていた。
だが、それらを誘発する化け物の姿が見えない。
いったいどうして、と思って周りを見渡すがそれらしきものは見えない。
化け物も、取り憑かれた者も。
(どうなってんだよ)
疑問は出てくるが原因は見当たらない。
境界になってる以上、化け物がどこかにいるはずだったが。
ただ、教室にいても仕方が無い。
持ち込んでるいくつかの道具を入れてあるカバンを持って外に出る。
指示機も取り出して状況を探る。
大雑把でも良いから、何らかの反応があればと思った。
ありがたい事に反応はあった。
だが、一つだけではなかった。
あっちこっちと複数の箇所を示している。
「なんだよ……」
複数の存在を感知したらそれらを指し示していく。
聞いてはいたが、実際に見るのは初めてだった。
これではどこから手をつけていいのか分からない。
目に見えてない所から接近してきてるだけに対処しようもない。
(どうする?)
ここから逃げ出すというのも考える。
だが、どこに逃げれば良いのかも分からない。
四方八方を指す指示機を見れば、周囲に化け物がいるのは明白だ。
そこから逃れられるとも思えない。
隠れてやり過ごす事も考えるが、化け物が見逃すかどうか分からない。
そう簡単に行くとは思えなかった。
楽観出来るものではない。
誰もいない校舎の中、頼れる者もいない。
外部と連絡が取れればと思うが、境界から出られるかも分からない。
(あ、そうだ)
思いついて鞄からトランシーバーを出す。
使い方の説明を受けてから用いた事はほとんどなかった。
それでもちゃんと動いてる事、電源がまだ残ってる事を祈りながら動かしていく。
「もしもし、聞こえますか?」
応答がある事を願いながら呼びかけていった。
それから数分、化け物が到着する。
どこから表れたのかと思う程数多く、校舎の窓ガラスや壁に貼り付き、敷地の中を歩き回っている。
カズヤの手にした道具では足りないし、そもそもカズヤの能力では撃退出来るものではない。
一匹二匹ならともかく、何十匹もいるだろうこれらを倒すには力が足りない。
逃げ出す事も難しい。
それでも決して諦めきったりはしない。
勝てないまでも一矢報いようとはしていった。
「……こんなんで大丈夫か?」
手にしたものを見て、いささか不安にはなったが。
掃除道具入れから持ってきた箒。
昔ながらの木で出来た柄と程よい長さから、打撃に使うには十分な大きさと硬さを持っている。
振り回して叩くだけでもそれなりの威力は出る。
しかし、外にいる化け物相手に効果があるとは思えなかった。
それでも手近にあるのはこんなものしかない。
贅沢は言えなかった。
「やるっきゃないよなあ……」
移動しながら見ると、昇降口から化け者共が入りこんできている。
壁や窓にはりついてる飛行型の化け物も窓を破ろうとしている。
これらを相手にするのだから、何でも用いねばならなかった。
そう考えながら最上階へと向かう。
一面窓だらけの廊下に歩き、その一つをわざと開ける。
自殺行為ではあるが、まずはこうするしかなかった。
あえて敵を引きつけるために。
様々な場所から入り込まれたらそれこそ対応が出来なくなる。
一カ所に敵を集中出来るならその方がやりやすい。
少なくとも前後から挟み撃ちにされる事は無い。
それでもそのうち敵は押し寄せてくるだろう。
そうなる前に少しでも数を減らしておきたかった。
長柄の箒に気力を込めていく。
ここ何回かのヨドミ破壊で得た修養値でこういう事も出来るようになっていた。
それを化け物にぶつけていく。
侵入して来た鳥や虫の形をした化け物は、気力によって体を抉られていく。
核も叩きつけられ、傷を負う。
すぐに消え去るほどではないが、化け物に与えていく痛手は大きい。
開いた窓に殺到してくる化け物を少しずつ倒していく事も出来ている。
とはいえ多勢に無勢。
一匹二匹を倒す間に、三匹四匹が雪崩こんでくるので少しずつ後退していく事になる。
倒した化け物も増えているが、それ以上に侵入してくる数の方が多い。
分かってはいたが、不利なのは変わらなかった。
それでも倒した分だけ数は減る。
一歩一歩後退しながらも、化け物を確実に倒し不利な状況を少しでも覆そうとしていった。
そうしてる間にも下からは人や動物の形をした化け物が侵入してくる。
それらは階段を上って上へ上へと向かっていく。
カズヤのいる所まで辿りつくのは時間の問題だった。
続きは明日の17:00予定。
誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。




