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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
七章

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69話 回想:変化

 その後に帰ってきた家族も同様だった。

 弟も、母も、父も。

 彼らにも化け物が取り憑いていて、外にいたノボルが処理をした。

 一般人であれば目にする事の出来ない存在も、ノボルと同行してる女なら認識する事が出来る。

 当然すぐに境界が発生していく。

 その間に取り憑いた化け物を倒し、影響を消していく。

 まだ家に貼り付いてるものもいるが、これで大きく影響を受ける事はなくなった。

 それらも、ノボルから連絡を受けた者達がやってきた事で処理が完了する。

 ベランダから脚立で屋根まで上がり、残った化け物を片付ける。

 晴れて家と家族が化け物から解放された。

 その瞬間にトオルの周囲に変化が起こった。



「なんだ?」

 初めて見る変化にカズヤは驚いた。

 周囲の景色がゆがみ、にじみ、消えていく。

 そして今までと違った姿をあらわしていく。

「あらまあ」

 隣でノボルが驚いている。

「普通はヨドミを壊せば始まるんだけど」

 今回は少しばかり違っていた。

 ヨドミを破壊しても変化は起こっていない。

 家にまとわりついていた化け物を倒した時点ではじまっている。

 だからこそ意外だった。

「化け物が残ってたからなのかねえ……」

 理由は分からないがそういう可能性も考えていく。

 ただ、カズヤにそんな事が分かるわけもない。

 いきなり始まった周囲の変化に驚くだけである。

「なに、これ」

「よくある事だ」

「よくある?!」

「そう、良くある事だ。

 必ずって言っていい」

 嘘ではない。

「ヨドミを壊すとこういう事が起こる。

 それで、今までと色々変わってくる」

「…………変わる?」

「まあ、見てろ。

 言うより実際に確かめた方が早い」

「でも……」

 なおも何か言おうとするも、言葉が出てこない。

 説明を求めたいのだが、何をどう聞けばいいのか分からない。

 変わっていく風景に圧倒されてもいた。

 多大な情報量を頭が処理しきれない。

 起こってる事を気持ちが受け入れていけない。

 それでも容赦なく変わっていく世界を黙ってみているしかない。

 景色が落ち着いていくまでの間、呆然としているしかなかった。



 ノボルが外に出てからあらためて池の中を見てみる。

 全てが終わると家の様子が変わっていた。

 どこか説然とした、整理のされてない家の中の様子が違っている。

 廊下や階段に置かれていた荷物などが無くなっている。

 テーブルの上に出しっぱなしになってる新聞や雑誌がなくなっている。

 流し台に積み重ねられていた食器がなくなっている。

 確かめてみると、それらが本来あるべき場所に入っている。

 家の間取りはそのままに、中が一新されていた。

 家族の様子も違っている。

 父も母も余裕のない雰囲気を漂わせていたが、それがない。

 弟と妹もどこか表情が豊かに感じられる。

 家庭内の雰囲気がここ数年とは全く違ったものになっていた。

 一番の違いが、頭の中にある記憶である。

 カズヤが体調を崩したころからの日々の記憶が変わっている。

 変化が起こる前の事も記憶に残ってるが、それとは別の出来事も頭の中にある。

 それがカズヤを混乱させた。



「たぶん、今までの出来事そのもの変わったからだと思う」

 二つの記憶について話すと、ノボルはそう言った。

 あくまで想像だけど、と言って。

「家の様子が変わったんだろ?

 そこに至るまでの道筋も変わったって事なんじゃないかな」

「それって、タイムスリップして過去を変えたっていう事になるんですか?」

 SFみたいな展開に頭が更に混乱する。

 化け物に続いてそんな事まで起こってしまうのかと。

 ノボルは、

「分からん」

と正直に答えた。

「どうしてこうなってるのかってのは、俺にも分からん。

 正解がなんなのかを調べる事も出来ないからな。

 たぶんそうなんじゃないかなって思うだけだ」

 そう言われて少しがっかりした。

 はっきりしてるのは、何もかもはっきりしてるわけじゃないのだという事だけ。

 起こった現象の理由は、そこから考えられる無理の無い範囲の想像でしかない。

「でもさ、それで何か悪くなってるか?」

 言われて考えてみる。

 何一つ悪くはなってなかった。

「だったら、それでいいんじゃないか。

 俺らはそう思う事にしてる」

「思ってるだけなの?」

 それもどうかと思ってしまった。

「それで納得するしかない。

 何が正しいのかなんて分からないし。

 だったら、今が前より良ければそれで良いって考えるしかないよ」

「それは、そうかもしれないけど……」

 すぐに納得する事は出来なかった。

 もしかしたらそれで良いのかもしれないが、すぐに答えを出して良いとも思えない。

 ただ、『前より良くなってるなら』という言い分が、起こった出来事を受け入れるやすくはしてくれる。

 安易に答えを出してよい事ではないだろうが、認めるかどうかを決める基準としてはそれなりに説得力はある。

「俺らもこれで本当にいいのかって思う。

 けど、こっちの方がいいと思ってやってる。

 どうしても納得出来ないなら仕方ないけど。

 でも、どういう答えになるにしても、考えて結論を出してくれ」

 自分達の考えを提示しつつも、そこで考えを止めないように。

 結論は己が考えた果てに出すよう求めてノボルは話しを切り上げた。

 言われてカズヤは、あらためて何が良いのかを考えていく事になった。



「ただまあ、それはそれとして」

 トランシーバーごしにカズヤが言葉を続ける。

「全員が取り憑かれていたんじゃ、職場や学校でもまずい事になってるかもしれない。

 やっぱり、そっちも放置できないから、場所が分かるなら教えてくれ」

「ええ、それはまあ」

「じゃあ頼む。

 面倒かけて申し訳ないけど、もうちょっと協力してくれ」

 それから一呼吸置いて、

「トランシーバーも返してもらわないといけないし」

と続ける。

 なんだか、接点も続けるための手段に使われてるように思えた。

 あると便利なのは確かだし、そういう裏はないのかもしれないが。

 例えそうだったとしても、断る理由はない。

「分かりました」

 そう言って父親の職場をどうにかして調べようと思った。

 母のパート先や兄弟のいる学校は知ってるので、あらためて聞き出すまでもない。

 すぐに分かる方だけは先に教える。

「ありがと。

 じゃあ、そっちの方も調べてみるよ」

 そう言ってノボルはトランシーバーをきった。

 そこで事が一段落した事を実感した。

 まだまだやる事は残ってるが、区切りはついた。

 今はそれがありがたく思えた。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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