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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
三章

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34/164

34話 不当な言いがかり → 中心部

「じゃあ、入るぞ」

 準備を終えた仲間にリーダーが声をかける。

 中心部であろう奥地に向かう通路の前、事前の点検を終えたところである。

 探知によってこれから進む通路の奥にユガミの存在をとらえている。

 全員、これからが本番なのを十分理解していた。

「通路には塩をまいておけ。

 それと、線香も途中においておいてくれ」

 そうする事で、通路からくる化け物を阻止できる。

 ユガミを相手にしてる時に、増援があったらかなわない。

 多少の時間稼ぎにしかならないが、それでも増援がやってこないというのは大きい。

 道具を持ち運んでるアヤナにそういった指示を出し、他の者達にも中に入ってからの行動を伝えていく。

 戦闘における基本的な行動の再確認程度であったが、各自が自分のやり方を思い出すには十分だった。

 中にいるのがどんな奴なのか分からない以上、対応する手段は流動的にならざるえない。

 それでも共通する基本事項だけはおさえておける。

 まずは守りを固める。

 それから様子を見て攻撃をしかけていく。

 基本的な流れはそんなものだ。

 複雑でも精緻でもない。

 だが、一番確実で損害も少なく、成功する確率が最も高い。

 だからこそ、それを誰もが徹底していった。

 それらが終わってから中に入っていく。

 順番は変わらない。

 戦闘担当の前衛が入り、それから銃を持ってる者達。

 灯りを持ってるアヤナのような者達がその後に続き、最後は背後からの襲撃に備える後衛。

 そんなアヤナに振り向きながら、

「しくじんなよ」

などといいがかりをつける。

 そんな輩をユウキが睨みつける。

 それすら笑いながら、そいつらは奥へと向かっていった。

「なんなの、あれ」

 呆れて憤るユウキの声に、アヤナは幾分救われた。



 通路の奥の広い空間は、探知結果通りユガミの居所だった。

 今までよりも更に巨大なネズミが陣取っている。

 尻尾を除いた体長で二メートルを超えている。

 それをネズミと呼んで良いのか悩ましい。

 入ってきた者達に威嚇する姿は、それだけで心胆寒からしめる。

 それでもユウキ達は塩をまいて安全圏を作り、戦闘に臨んでいく。

 ヨドミである巨大なネズミは、そんなユウキ達を注意深く見つめている。

 ゆっくり遠巻きに動きながら、飛びかかる隙を見つけているようでもある。

 銃口がその動きに沿って動き、突発的な事態に備えている。

 戦闘担当の前衛が、ひたすら塩をまいて足下を清めていく。

 しかし、彼らも決して巨大ネズミから目を放さない。

 いつ襲いかかってくるか分からない危険が目の前にあるのだ。

 決して気を抜くことは出来なかった。

 それでも巨大ネズミはすぐには襲ってこない。

 ばらまかれた塩が結構な範囲にひろがり、簡単には飛びかかれない程になってもまだ見つめている。

 随分慎重だと誰もが思った。

 おかげで足下の安全地帯はかなりひろがった。

 飛び込んできても、すぐに対応が出来るはずだった。

 また、接近してこないならそれはそれでありがたい。

「撃てるか?」

「いつでも」

「よし」

 前衛が武器を構え、巨大ネズミが迫った時にそなえる。

 猟銃と散弾銃がその後ろから巨大ネズミを狙う。

「撃て」

 リーダーの声に従い、引き金が引かれていった。



 銃声が鳴り響き、弾丸が飛んでいく。

 狙い過たず巨大ネズミをとらえたそれらは、化け物の体を穿っていく。

 ただ、さすがに一発二発で削れるほど甘い相手ではない。

 表皮をいくらか抉りはしたが、手傷と言う程にも損傷を与えてない。

 続けて二発三発と撃ち込んでも、それはさほど変わらなかった。

 ただ、ネズミも黙って撃ち抜かれてくれるほど気前が良いわけではない。

 一発目が当たると同時に素早く動いて次の弾丸を避けようとする。

 巨体に似合わぬ俊敏な動きは、なるほどネズミと言うにふさわしい。

「駄目だ、速すぎる」

 猟銃を構えていた男が銃を悲鳴をあげる。

 射程距離はあるが、一点のみ射貫くので素早い相手には狙いがつけにくい。

 腕のたつ者は、その動きを見きって当てるというが、そこまでの腕は無い。

 対して散弾銃を持ってる者は、気にせず引き金を引いていく。

 その名の通り『散らばる弾』を撃つので、ある程度狙いが甘くても相手をとらえる事が出来る。

 ただし、小さな玉が分散する事になるので、どうしても一発の威力は小さくなる。

 射程も猟銃などに比べれば短い。

 あくまで銃としてみればの話しで、威力も射程も実際は結構ある。

 当たれば人間なら、最低でも大怪我を負うだろう。

 射程も相応に長い。

 そんなもので狙ってるのだから、それなりにネズミに当たっていく。

 ただ、相手が相手なので、散らばる小さな玉が幾らか当たった程度で仕留める事は出来ない。

 動きもそれほど鈍ってない。

「当たってるんだがなあ……」

 いつもの事ではあるが、この程度では簡単には倒れてくれない。

 動きが鈍る事も無い。

 気力を込めた銃から撃たれた弾丸は確実にユガミの体を削っている。

 いるのだが、効果を感じられるほどではない。



「動きを止めろ!」

 まずはそれが先だった。

 一行の中で拘束を使える者が気を放つ。

 それは広範囲に網のようにひろがり、ユガミであるネズミを包んでいく。

 さすがにネズミもそこから逃げ出す事はできず、気の網にとらえられていく。

 なのだが、ネズミはそれをものともせずに振り払っていく。

 一瞬だけとらえはしたが、気力の網はネズミが動くと簡単に引きちぎられていった。

 根本的な強度が全然足りない。

 そこらにいる化け物なら捕らえられるのだが、ユガミ相手ではせいぜい数秒動きを止めるくらいだ。

 ただ、それで十分でもある。

 猟銃で狙いをつけるには。

 引き金が引かれる。

 破裂音が響く。

 気をまとった鉛玉が巨大なネズミを貫いていく。

 まともに当たった銃弾がネズミの体に突き刺さり、体の一部を消滅させる。

 ここに来てようやく損傷らしい損傷を与える事が出来た。

 まだ動きを止めるまでにはならないが。



 それでも状況は悪い方向に転がっていく。

 通路の方から聞こえる不穏な音に、後衛に居た者達が振り返る。

 その目には、通路を進んでくるネズミたちの姿が見えた。

 ばらまいてある塩によってその身を消し去っていく姿が。

「後ろ!

 来てるぞ」

 予想していただけに、ほとんどの者が驚かない。

「どこまで来てる?」

「まだ全然遠い。

 けど、このままじゃすぐにこっちに来る」

「分かった。

 近づいてきたら対処してくれ。

 こっちも一気に片付ける」

 言う程簡単ではない。

 だが、やるしかない。

 後衛に二人を置いて、そちらは任せる事にした。

 ついでにアヤナもそちらに加える。

 荷物持ちのように道具を肩にかけてるアヤナは動きが遅くなっている。

 戦闘訓練を受けてるわけでもない。

 足止めに残した二人の近くで、必要な道具を取り出せるようにしておいた方が無難だった。

 前に出るだけの能力と装備を持ってるわけではないし、後方から援護するにしても飛び道具もない。

 持ってきた道具でそれなりに支援も出来るかもしれないが、無理して危険な目にあう必要もない。

 とりあえず三人で後ろからの襲撃に備えさせる。

 そちらが支えてくれてる間に、ユガミである巨大ネズミを倒す。

 他に選べる道はない。

 リーダーは可能な限り攻撃を続けるように指示を出していった。



「拘束を続けろ。

 動きが止まったら撃て」

 とにかく足を止めねばならない。

 その為にも、ある程度の打撃を与える必要があった。

 攻撃を当てて体を削り、動きを鈍くさせる。

 気力による拘束がさして効果を期待出来ないので、そうしていくしかない。

 拘束と射撃が交互になされていく。

 確実に体を削っていってはいるが、時間がどうしてもかかる。

「後ろからどんどん近づいてるぞ」

 そちらも余裕がない。

 早めに片付けねばならないが、そうする手段がなかった。

「なんとか食い止めろ」

 無理を言ってるのはリーダーとて分かってる。

 だが、他にどうする事も出来ない。

「はいよ、そっちも早めにお願いしますぜ」

 後ろを任されてる方もそう言うしかなかった。

 とにかく後ろから来てる連中を食い止めねばならない。

 でなければ、一気に押し切られる。

 そうなったら、ヨドミを封印するどころではない。

 全滅を覚悟せねばならなくなる。

 それだけはどうやっても避けたかった。



「弾丸が無くなるぞ」

「こっちも、気力がもたん」

 巨大ネズミをだいぶ削ってはいるが攻撃してる方も限界になってきた。

 帰り道もあるから、弾丸なども節約したい。

(ここまでか…………)

 リーダーは腹をくくるしかなかった。

「突っ込むぞ」

 前衛に者達に声をかける。

 あとは接近して攻撃をするしかない。

 出来ればもう少し弱まったところで攻撃をしたかった。

 まだ巨大ネズミに大きな損傷を与えてるわけではない。

 幾らか落ちてきたがまだ動き回っている。

 それでも近づいて仕留める事を考えねばならなくなってしまった。

「足を狙え。

 止めはそれからだ」

 そう簡単に出来る事ではないがやるしかない。

 目の前の巨大なネズミを封印しなければ逃げ出す事も出来ないのだから。

 前衛の者達が一斉に飛びかかる。



 直後、一人がネズミの突進を受けて倒れた。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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