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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
三章

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33話 帰還/第二次探索 → 不当な言いがかり

「あの、大丈夫……じゃないですよね」

「うん、かなりきつい。」

 翌日、再度ヨドミの出現地に向かったアヤナは、大分疲れているユウキと合流した。

 一旦分かれたあとのアヤナ達がどれほど大変だったのかを、その様子が伝えてくれていた。

 目に見えて大きな怪我などはないが表情がない。

 動きも、言葉の受け答えも緩慢だ。

 何度も行き来してるのだから無理もないとは思った。

 昨夜でヨドミがどれほど面倒な場所なのかを知っただけに、苦労は察して余りある。

「今日は頼むよ」

 そう言ってくる言葉に覇気がない。

 一回しかヨドミに入ってないアヤナにそう言ってくるあたりに、余裕の無さも感じられた。

 予備校が終わってから合流したアヤナであるが、こんな調子で大丈夫なのだろうかと心配してしまう。



 作業そのものはかなり進んでいた。

 ヨドミの内部調査は確実に進み、かなり奥までの探索を終えていた。

 まだ進んでない場所もあるにはあったが、それらを踏まえてもかなり奥まで進んでるのが分かる。

 手書きの地図を渡されたアヤナは、かなり先まで記されたそれを見て驚いた。

(こんなに進んだんだ)

 困難さを知った後だけに素直に感動感心した。

 緊張もする。

 ユウキがボソッと漏らした、「次の突入で終わるかも」という言葉がそうさせていく。

 かなり広範囲にわたって調査は終わってる。

 次に突入したら、中心であるユガミのいる場所に至るだろうと予測されている。

 間に一回くらいは戦闘があるかもしれないが、それをを踏まえてヨドミの封印にかかるつもりだと聞かされもいる。

(そっか……)

 いよいよなのだと思うと、不安を抱く。

 果たして上手くいくのかと。

 何の技術も持たないだけに、そこに入っていって上手くやれるか分からない。

 生きて帰れるかもあやしい。

 逃げ出すつもりはなかったが、どうなってしまうのかは全く分からなかった。



 アヤナの他にも合流してくる者達が集まってくる。

 突入の準備がはじまり、道具が分けられていく。

 アヤナには昨夜と同じように、照明と道具をいれた鞄が渡された。

 今日も荷物持ちは確定だった。

 特に何が出来る訳でもないから当然なのだろう。

 他の者達も同じように準備をしていく。

 戦闘そのものは昨日より減ってるはずである。

 間にいる化け物は一掃してる。

 新しく生まれてきてるものもいるだろうが、行く手をふさぐほどに回復はしてないはずだった。

 ただ、だからこそユガミに到達出来る可能性も出て来る。



「きっついね」

 ある程度回復してきたユウキが荷物を肩にかけてため息をもらす。

「やっぱり、行くんですよね」

「奥まで?

 当然でしょ」

 ここで引き下がるような素振りは見せない。

「その為に苦労したんだから」

 昨日今日でがんばったのはその為である。

 まずければ撤退はするが、逃げ出すつもりはこれっぽっちもない。

「大変だろうけど、よろしく頼むよ。

 一人いるだけでも大分ちがうし」

 それは、一人が抜けると他の者達の負担が増大するという事でもある。

 無能…………言葉は悪いが紛れもなくそんな状態のアヤナであるが、それでも出来る事はある。

 小さな事であっても、誰かがそれをやってくれれば、他の者はそこから解放される。

 アヤナも例外ではない。

「ま、逃げずに頑張ってればどうにかなるから。

 とにかく真ん中までいこう」

 真ん中がユガミであるのは言うまでもない。

 アヤナは黙って頷いた。



 途中の戦闘は確かにほとんど無かった。

 今日の探索のおかげであろう、化け物との遭遇はほとんどない。

 道順も分かってるので、進みに滞りもない。

 ただ、先へどんどん進んでいくので、アヤナは遅れないようにするのが大変だった。

 やはり未踏の場所というのは、どうしても警戒が働く。

 知らず知らず周囲を見渡し、曲がり道の角などでは気持ちも足も止まろうとしてしまう。

 様子を見ようとする本能的な行動なのだが、他の者達はどんどん先に進もうとする。

 そういったところで差が出てきてしまう。

 見知らぬ場所や見えない部分への本能的な警戒が足を止めるのだ。

 そこが他の者達との差になってしまう。

 道になれてたり、危険を瞬時に察知出来るほど感性を高めてれば、警戒しつつもよどみなく進んでいけるのだが。

 当然ながらアヤナにそこまでの経験も技術もない。

 他の者達と一緒に動いていくにあたり、どうしてもそういった場面で差が発生してしまっていた。

 先を急がねばならないので、そこは仕方が無いとは言える。

 しかし、どうしてもそれがストレスになってしまう。

 アヤナも、一緒にいる他の者にも。

 慣れてる者と初心者の間に発生する、どうしようもない違いであった。



 ただ、アヤナに求められてるのは灯りを掲げる事くらいである。

 戦力として求められる事はほとんどない。

 せいぜい、線香や塩による補助的な作業くらいである。

 他にも幾つか持たせている道具を、必要に応じて使ってもらえればなお良い、といったところだ。

 新人であるし、これはどうしようもない。

 ただ、そうであっても今は足手まといになってしまってる。

 それを不満に思う者もいる。

 そういった者達は自分が新人だった頃にかけた迷惑や、自らが足手まといだった事を全く気にもしない。

 口や態度に出すかどうかは人によるが、新人いびりの理由として用いられるのは明白である。

 そういった問題がこういった時に発生していく。

 それは「遅えな」「とろい」といった文句という形ですぐにあらわれてきた。

「よせ」とリーダーはたしなめるが、まったく意味が無い。

 やりたい奴からすれば、実際に足を止めてるという事実を盾に文句を言い続ける。

 目的が相手への非難や暴行という犯罪行為であるから、それらが本当の理由であるわけではない。

 とにかく利用できる理由を用いて、誰かを攻撃したくて仕方が無いだけだ。

 ストレス解消ですらない。

 ただ、これらを今ここでやる事が問題ではあった。

 命がけの危険な作業をしてる中での事である。

 人として許されざる行為であるというのも去る事ながら、無意味な内紛を呼び起こしてるのは自殺行為でしかない。

 言い出してる三人ばかりの馬鹿者達に、アヤナ以外の十人が敵意を向けるのも当然の流れであった。



 不当な行いを抱えながら一行は進んでいく。

 途中で化け物との遭遇が一度あったが、それもどうにか撃退した。

 その中でアヤナへの不当な言いがかりもあったが、損害が出る事はなかった。

 とはいえ、これで完全に一行は二つに分かれる事となった。

 不当な言いがかりをつけてる者達と、それを侮蔑する者とで。

 中心部を目前として、一行は最悪な状態に陥ってると言えた。



 もっとも、こういった事態はさして珍しくもない。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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