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4月。朝のこと。

後悔なんて、あるわけない。

 朝。

 都会ではスズメはメンドリやにわとりの代わりに朝を告げる鳥として広く知られている……はずだ。

 そして本屋家の朝はそのスズメの声によって起こされる。

 別段けたたましいとか、そういった物ではなく、ただ、スズメが鳴いていると、俺は「ああ、朝が来たんだな」とことさらに理解する。

 しかし。今現在理解できないことが一つ。


 ……どうして朝っぱらから全裸の少女が俺の隣で寝ているのか。誰か。説明してくれ。


 普通だったら、こんな風に落ち着いて物を考えている暇も、見る余裕もないかもしれない。

 だが人間、何事も自分の許容限界を過ぎてしまうと落ち着いてもの考えることができるようだ。誰か高名な学者はこれを論文として発表してはどうだろうか。

 とりあえず、今俺にできることは一つ。

 とりあえず俺は机の上に乗っていたベブズをむんずとつかみ、背表紙を下にし、そのまま。


 ごっつん。


 思いっきり振り下ろした。


「――いったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 目の前にいる少女は叩かれた頭頂部を押さえながら起き上がった。


「あ……ああ……朝……から……い……いた……い……」


 手元からベブズが呻く声が聞こえる。


「何するんですか何するんですか何するんですか! 人が疲れて眠っていたところにいきなり一撃を入れますか!? 普通!?」

「うっせえ! 何人の部屋及びベッドに侵入して、しかも全裸で寝てやがんだ! 痴女かお前は! ケーサツ呼ぶぞコラァ!」


 そう言ったとき少女の顔はみるみるうちに髪と同じくらいにまで赤くなり、シーツで前を隠しながら、


「ちちちちちちちち痴女!? 痴女って今言ったですか!? 女性に向かってそれは言っちゃいけないんですよ!」

「その言葉今時分の自分の格好を見てから言えこのボケナスが! ――ってああっ! もうこんな時間じゃねぇか! くそっ、時間がねぇ! とにかく学校行ってくるから、それまでおとなしく服着て部屋の中で留守番しとけ!」


 そう強い口調で言った後、俺は部屋から出て行こうとしたが、服の端を掴まれ、動けなくなった。

 振り向くと案の定少女が握っていた。……心配そうに。


「ガッコウ、って何ですか? まさか何か危ない所じゃ……」

「……確かに……いや、危なくない。基本的に危なくない! だからついてくるな! ついてくるんじゃねぇぞ! いいな?」


 少女はすこし考えたような仕草を見せた後、


「……マスター、」

「絶 対 に つ い て く る な」

「……はい」


 一応こういっておかないとついてきそうだったので。念を押して強く言った。

 少女は少し残念そうにしおれていた。

 どうやらこの少女、自分を守るために動こうとする節がある。昨日やってきた和服少女を……その、殺そうとしたのも、それが原因かと思う。

 昨日のことは夢と思いたかったが、悲しきかな、体に少し残っている疲れが夢ではないことを証明してくれた。

 とにかく、軽く肩がぶつかっただけでも俺を守るためにつかみかかりかねない。下手をしたら瀬戸の軽い冗談で(瀬戸が)死にかねない。それはごめんだ。殺しても死ななそうが。

 とにかく、一抹の不安を残しながら俺は制服に着替えて学校へ行くことにした。

 なったのだが……。

 学校の登校中に不安になって鞄の中身を覗いてみたらベブズが入っていた。


「何でてめぇ入ってんだコラ」

「まぁあれだね。僕を所持していた前の相棒君が、物忘れがひどくてね。僕に相棒君の元を離れさせない呪いをかけてるんだ。まぁ、たとえ火の中水の中といえど、僕一冊をおいて外に出かけることはできないという事……って相棒君。何をしているんだ。その青いヒモは止めるいたたたたたた! 食い込んでる! すごく食い込んでる! なんか主に頭と脇と股に食いかかっていたたたたたたたた!」

「お前の頭とか脇ってどこだよ!?」


 とにかく学校では絶対に喋るなよ――分かった。支障が無いようにしよう――と俺たちは不可侵(?)条約を交わし、一人重い空気を背負いながら、一人と一冊で学校に行くことになった。

 ……正直、何も起こらなければ御の字だと思う。


今回の没ネタ。

少女はすこし考えたような仕草を見せた後、


「……マスター、」

「絶 対 に つ い て く る な」


 そう、強く念を押して言ったのだが、少女はにこやかに、


「だ が 断 る」


と返してきた。


――OUPS?――

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