4月。魔人の力のこと。
バトルシーン突入。
私の目が覚めるとき、それは頭の激痛から始まりました。
痛さに目を覚ますと、眼前には一冊の見覚えのある本が落ちていました。
私はその本に見覚えがありました。
これは、自分の主……マスターが持っている物だと言うことが。
「――ってて……ったく、あんの使えないクズめ、なんて事をしやがる……角とかが曲がってたら承知しないぞ……」
ぶつくさと文句を言っている小うるさい本でした。
「ん? ――ああ、起きたのか。分かっているかな? 君のなすべき事を」
「なすべき……こと」
私の、なすべき事は。
自らの主を、マスターを死守すること。
これが、私に備え付けられた唯一絶対の命令でした。
たとえ、自分が死んでも、マスターを守る。
それが、私に与えられた命令だった、はず。
「惚けているところすまないが――、はやいとこ僕を担いで相棒君の所にひとっ飛びしてくれないかな? 使えないクズでも、僕の今回の相棒だからね」
「……分かってますよ。うるさい本ですね」
私はしっかりと意識を持った後、本を拾って、マスターの元に飛びました。
「――ふっ」
息を短く吐いて。床を、蹴ります。
そして今まさにマスターに襲いかかろうとしている敵の元へ、横蹴りをかましました。
かましたのはいいのですが……勢いがありすぎて、少し転んで、頭をぶつけてしまいました。
「あたたた~……ホント、痛かったですよ~……。でも、マスターの無事を確認して、それに敵も撃退。うん。何とかなったですね。さて……よくもマスターをいたぶってくれやがりましたねぇ? この痛み、千倍返しにして差し上げますよ!」
ビシィ! っと、私は人差し指を相手にさしました。
少し埃に覆われていてよくは見えませんが、相手はどうやら動いてはいないようです。
と、油断していた刹那。
黒い腕が、私の体をわしづかみにしました。
「……なるほど。これが魔人、か……これは少しやっかいな物に当たったか……」
埃の仲から、瓦礫を払いつつ、相手はゆっくりとこちらに向かってきました。少しだけ髪が乱れて、脇腹を押さえているところを見ると、どうやら少しはダメージがあったようです。
腕でわしづかみにしながらその術者はそんなことを言ってきました。
「よく言うですよ。これは《巨人の腕》ですね? となると、あなた――相当の魔術師ですね?」
《巨人の腕》……古来より召喚されるのが難しいとされている召喚物。千の腕を持つ巨人の腕の一振りとされている。当時でも召喚して制御をするのが難しいとされており、制御しきれずに町を一つ滅ぼすことも珍しくはないとされている。その上、召喚に成功したとしてもかなりの精神力を使うので、使うにしても一瞬のみにしか使えないはず。
少なくとも、私の中にはそう記録されていた。
それをこの若い魔術師は、自分の腕のように操っている。
腕が締め付ける力は少しずつ強くなってきている。私の体が段々と痛みを感じてきていた。
魔術師はふっ、と口元を緩めた。
「ほう……そこまで分かっているのか……ならばいいだろう。このままつぶされろ。自らの主を呪いながら、な」
更に締め付ける力を強めてきた。けど、
「……あなたは何か、勘違いをしてやがるようですね?」
それに負けず劣らず、私は両腕に力を込めた。
「確かに、《巨人の腕》は召喚物の中ではかなりの上位にある物です。が」
次第に手は開かれ、いや、私が開いているのだから開いていった。
「忘れてないですか? あなたの目の前にいるのを何なのか」
そして手を一気に押し開いた。
両腕が自由になった瞬間、そこに術者である少女の隙も、また生まれた。
そこに術者のおなかに向けて拳を突き出しました。要は殴りました。
「か、はっ……!」
少し息が漏れる音がしてそれを耳で認識した後、更に回転蹴りを入れました。
術者は面白いように飛んでいき、外にある木にぶつかりました。
ややぐったりしている術者に向かって一歩、一歩とゆっくりと間を詰めていったところで、
「調子に……」
術者の方から声がしました。見ると腕がゆらゆらと漂ってます。
「のるなっ!」
腕がこちらにすごい速さで向かって来ました。速度を維持したまま、腕はこちらに向かってその拳を振り下ろして来ました。
盛大な土煙。少しだけ術者がにやついているのが見えました。
ですが。
「遅い、ですね」
私は少し後ろに下がって腕の一撃を……足のすぐそばの所でかわしていました。
術者の表情は一瞬にして驚きに変わり。
「私、目は良い方なんですよ」
その瞬間、私は腕を思いっきり蹴り飛ばしました。
腕は地面の上を二、三回ほど回転して止まり、そのまま霧散し、風にながれてどこかに消えていってしまいました。
が、そんなことはどうでもいいです。
私は術者の近くまでゆっくりと歩み寄り、首をつかみました。
「さぁて……どう料理してやろうですか……」
そう言って更に首を締め付ける力を強くする。術者の口からは、息が絶え絶えに漏れる音が聴こえてくる。
あと少しで息を止めることができる。そう思ったとき。
「いい加減に……しろっ」
ごつん。
「いっ……ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私は頭のてっぺんからやってくる痛みに耐えきれずに、思わず首から手を離し、頭を押さえて転げ回りました。
痛さに少し涙目になりながら私は上を見上げると、マスターが本を持ってこっちを睨んでいました。
「ぐ……おお……あ、相棒、君……なんか……すごい……い、痛みが……」
「黙れ。喋るな息をするな。それどころか、どうしてくれんだ。これ」
マスターが辺りに目を向かわせると、ほとんどの物が壊されていたり、原型をとどめていなかったりと結構ひどい状態になっていました。
「え? いや、あの、その、えーと……」
「いきなり出てきて物をぶっ壊すわ、殴りかかるわ絞め殺そうとするわ、ホント、何もんなんだお前」
呆れながらマスターが詰め寄る。
「だ、だって――」
ごつん。
「いったぁぁぁぁぁぁ!」
またしても頭に激痛。
「いいわけは聞かねえ。朝までにとっとと直しておけよ?」
「で、でも」
「わかったな?」
「……はい」
「そこの和服も! いいな!?」
そう言って和服の元へと近寄るマスター。しかし、ぴくりとも動いていないところを見て顔面蒼白でこちらの元へ戻ってきました。
「お、おい!? アイツ白目向いてぶっ倒れてるんだけど!?」
「え? だって殺す気で絞めましたし……」
マスターに攻撃をしていたのだ。勿論そのくらいのことは受けてもらわないと困る。
一瞬、マスターは何か言いたそうな顔をしたが、顔を背けて、
「……とにかく、部屋に運ぶのを手伝え」
マスターはあわただしく私にいろんな指示を飛ばしながら魔術師を家に運び込みました。マスター曰く、「ひとまずはソファーに寝かせておけば大丈夫だろう」ということらしく、そのまま寝かせていた。
マスターはそのまま眠ってしまった。ふっと気を緩めたのか、そのまま眠ってしまった。
ひとまず私は、マスターに命じられた仕事を淡々とこなしていた。
今回の没ネタ。
「この痛み、千倍返しにして差し上げるでち……」
「この痛み、千倍返しにしてあげ……」
「このいちゃみ、千倍……ふぇえ~ん。マスター」
「……泣くなよ。台詞間違いは誰にでもあるから」
「……何回間違えたんだ? もうリテイクは取る予定はないそうだが? アキラ」
「マジで?」
――Re:TAKE PLEASE!!――




