sideウォルクリス08
翔太郎の給料日。
「給料でアイス買って食べてもいいよ。チョコがかかってるやつがオススメ」
枕元に、翔太郎からのメモが置いてあった。
「アイス」がどんな食べ物かは、翔太郎の知識として知ってる。
冷たくて甘くて美味しい食べ物らしい。
食べてみたいな。
よし、アイスを買いに行こう。
「おじちゃん、おでかけするの?」
寮の玄関から外へ出ると、黄色い帽子を被り、ウサギの絵がついたサコッシュを肩からかけた琴音ちゃんが振り返る。
彼女も出かけるところかな。
「アイスを買いに行くんだよ」
「琴音もアイス買いに行くんだよ」
「じゃあ、一緒に行こうか」
「うん」
僕と琴音ちゃんは、手を繋いで街へ続く坂道を下りていった。
街に一軒だけあるコンビニの冷凍庫には、いろんなアイスが並んでいる。
どれも美味しそう!
僕はその中から、チョコでコーティングされた棒つきアイスを選んだ。
赤い袋に入ったそのアイスは、翔太郎の記憶にあるお気に入りの品だった。
「おじちゃん、どれにする?」
「この赤い袋のやつにするよ」
「琴音はこれ。ピンクのかき氷が好き」
僕たちはそれぞれレジに並んで、アイスを買って店を出た。
民宿まで帰ってからだと溶けてしまうから、お店の前のベンチに座って食べよう。
「あっ!」
琴音ちゃんがアイスの袋を開けようとした瞬間、前方から黒い鳥が飛んできて、アイスの袋を咥える。
「カラス」という鳥だ。
僕の世界には、あんな真っ黒い大きな鳥はいない。
カラスは琴音ちゃんの手からアイスを奪い取り、急上昇して屋根の上にとまった。
「琴音のアイス返して!」
琴音ちゃんが叫んでも、カラスは屋根から逃げもせず悠々としている。
カラスは頭のいい鳥で、屋根の上にいれば人間は近寄れないと思っているらしい。
(腹立つ鳥だなぁ。見てろよ……)
僕は身体強化魔法を起動して、跳躍に使う筋肉を強化した。
カラスが琴音ちゃんのアイスの袋を食い破ろうと足元に置く瞬間、僕は垂直ジャンプした。
「返してもらうぞ」
ビックリして固まるカラスの足元からアイスを奪い返して、そのまま真下に着地。
琴音ちゃんが目を真ん丸にしている。
「はい、取り返したよ」
「おじちゃん凄い!」
大はしゃぎになる琴音ちゃんとハイタッチして、アイス奪還を喜び合った。
カラスは驚いて飛び去っていく。
僕たちはベンチに座り、アイスを食べ始めた。
「おじちゃん、スマホで撮られてたよ」
「え? なんでだろう?」
スマホで撮られてたらしいけど、悪いことしてないから、まぁいいか。
初めて食べたアイスは、ひんやり冷たくて濃厚な甘さで、貴族様が食べるお菓子みたいに豪華な味だった。




