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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep80:カラスとアイス

 筋肉痛で目覚める日本の朝。


(イテテ……また身体強化使ったな?)


 民宿初鹿の社員寮で、僕は顔を顰めながら起き上がる。

 昨日のウォルクリスの記憶が流れ込んできた。

 どうやら、琴音ことねちゃんと一緒に街のコンビニでアイスを買ったら、カラスにかっさらわれたらしい。

 で、取り返すために身体強化で筋力を上げて飛び上がり、コンビニの屋根にとまったカラスからアイスを奪い返したんだ。

 幸い、アイスは包装紙を破られる前で、溶けてもいなかった。

 無事に取り返せて良かったな。


 ……それはともかく。


(コンビニの駐車場で身体強化使っちゃ駄目だろ!)


 僕は頭を抱えた。

 記憶によれば、その現場に居合わせた人々にスマホで撮られたらしい。

 アイスを取り返せた【僕】は、撮られても全然気にしてなくて、琴音ちゃんとハイタッチして喜んでいた。


(SNSや動画サイトに投稿される予感しかないぞ……)


 恐る恐る、スマホで「カラス」「アイス」で検索する。

 予想通り、既に複数のSNSに投稿されていた。


 ……が。


 アラフォーのオッサンが、コンビニの屋根に届くような跳躍をするなんて現実味が無かったようだ。

 それぞれのコメントを見ると「AIだろ」「AIだな」という感想ばかりだった。

 今はリアルな動画が素人でも簡単に作れてしまう時代だから、現実離れした映像は全て作り物だと思われる。


(……良かった。視聴者は誰も実際の映像とは思ってない)


 僕はホッとしながら警備員の制服に着替え、朝の見回りに出た。


 民宿を囲む雑木林は、深緑の葉に覆われている。

 響き渡るセミの声が、夏を感じさせた。



 ◇◆◇◆◇



 SNSに投稿された動画はAI作品だと思われ、大して拡散もされずに終わっていた。

 しかし、現場に居合わせた人々の噂は、そうはいかない。


「鷹野さん、カラスからアイス取り返したんだって?」


 朝食をとりに休憩室へ行った途端、桔梗さんに聞かれた。

 琴音ちゃんから聞いたんだろうか?


「鷹野さん、カラスを撃墜したんだって?」


 百合さんも来ていきなり聞いてくる。

 撃墜は……してないような?


 田舎の噂はあっという間に広まる。

 仕事あがりに缶ビールを買いに行ったら、すれ違う小学生たちがこっちを見て声を上げた。


「あ! カラスハンターだ!」


 ……いや、狩ってないし。


「ちがうよ、カラスキラーだよ」


 ……殺してません。


「え~? カラスゲッターじゃないの?」


 ……ゲットしてどうする。


 ツッコミたくなる子供らの言葉を聞きながら、僕はそそくさと通り過ぎる。


 田舎おそるべし。


 オッサンはしばらくの間、カラスネタでいじられたのだった。

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