↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/255

ep72:虚弱体質の末っ子姫

「ウォルクリス様、また王宮へ来て下さらない?」


 もうすっかり慣れてしまった、王宮からの呼び出し。

 ヴィオレット様は今日も単独で護衛もつけずにリシュ領を訪れた。


「いいですよ。今日は何を作りましょうか?」

「今日はわたくしの妹に何か作って下さる?」

「分かりました」


 今回は陛下の食事を作るわけではないらしい。

 ヴィオレット様から、妹の話を聞くのは初めてだ。

 僕は騎士団のまかないを見習いメンバーに託して、ヴィオレット様と共に王都へ向かった。



 ◇◆◇◆◇



 ガリア王国、首都フルール。

 国王陛下アルブル・フリュイティエ・ロワ・フルールが住まう城は、白い石灰岩の壁、尖った塔やバルコニー、小塔が複雑に組み合わさった巨大な建物だ。

 白い壁と青灰色の屋根が美しく、初めて見る者は思わず溜息をつくという。

 その城の後宮、王族が生活するエリアに立ち入ることが許された稀有な平民が、神の料理人ル・キュイジニエ・ドゥ・デューと呼ばれる僕だった。


「はじめまして、ウォルクリス様。わたしのことはリュンヌと呼んで下さい」


 フルール城の後宮、未婚の王族が生活するエリアの一室。

 ベッドの上から挨拶してくれた小さな女の子は、痛々しいくらいに痩せこけている。

 ヴィオレット様の妹は、身体が弱くて寝込んでいることが多い少女だった。

 年齢は10歳とのことだが、小柄なのでもっと年下に見える。


「はじめまして、リュンヌ様。今日は僕が御夕食をお作りしますね」

「ありがとう。神様が授けた料理を食べたら、わたしも元気になれそうな気がします」


 弱々しく微笑む子を、元気にしてあげたい。

 まずは好みを聞いてみよう。


「リュンヌ様は、どんな味付けがお好みですか?」

「辛くないのがいいです。ラシスムが作るスープは、いつも辛くて……」


 香辛料オタクの料理長、病人や子供にスパイスまみれのスープを出すなよ。

 この子がここまで痩せてる原因は、病弱なだけではない気がした。


「分かりました。リュンヌ様の好みに合う味付けにしますね」


 僕は一礼して退室すると、ペンダントの転移機能を起動した。



 ◇◆◇◆◇



 領主様の隠し部屋。

 僕はまた内側から扉を開けて出た。

 執務用の椅子に座る領主様が振り返る。


「もう、この本棚がいきなり動いても、驚かなくなったぞ」


 領主様が真顔で言う。

 本来は有事の際の逃走経路になる隠し扉だが、僕が何度も通ったので、通用門くらいの認識になったらしい。


「必要な食材があるなら持っていけ。どうせまた陛下のご所望だろう?」

「いえ、今回はリュンヌ様です」

「末の姫君か。滋養のあるものを作って差し上げなさい。香辛料抜きで」


 領主様は、溜息混じりに言う。

 何か知っている感じがする。

 僕は領主様に聞いてみた。


「領主様は、リュンヌ様の病状を御存知ですか?」

「うむ。あれは病ではない。好まぬものを食べさせられ過ぎたせいだ」

「リュンヌ様が好まぬものとは何ですか?」

「辛い物、香辛料だ。食べると吐き気がして熱を出すほどお嫌いなのだよ」


 領主様の言葉で、僕はリュンヌ様の容態をほんのりと理解した。

 おそらく、香辛料アレルギーか。

 香辛料を使いまくるクソジジイの料理を食べてたら、悪化するしかないだろう。

 リュンヌ様には専属の料理人が必要そうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。