sideウォルクリス07
「鷹野くん、すまんがシフトを変わってもらえんかな?」
朝ごはんを食べていたら、月野さんから話しかけられた。
月野さんは70代のおじいちゃんで、民宿初鹿の夜間警備の担当だ。
翔太郎にとっては、同じ会社の先輩にあたる人だった。
「昨夜、同級生が亡くなったらしくてな。通夜に出たいんじゃよ。今日の昼間の警備はワシがやっておくから、夜間警備を引き受けてもらいたいんじゃ」
夜間警備ということは、異世界にいる翔太郎と睡眠のタイミングがズレて入れ替われない。
けど、まあいいかな?
翔太郎は疑問に思うかもしれないけど。
この前うっかり昼間に入れ替わっても、困ることは無いからお互いに気にしなかったし。
「いいですよ。じゃあ昼間の警備よろしくお願いします」
僕は月野さんとシフトを交代して、朝食後は部屋でゆっくり筋トレして、昼食後は夕方まで睡眠をとった。
夜の警備は昼とは雰囲気が違う。
不審者がいないか念入りに見回りを続けた僕は、深夜の中庭で怪しい人影を見つけた。
(誰だ? 泥棒か?)
僕はコッソリ近付いて、不審者の顔を見ようとした。
木の陰に隠れながら見ると、そこにいたのは宿泊中の男性客だった。
但し、裸だけど!
なにこの人?!
なんで服着てないの?!
こんな夜中に中庭で立ってるって何なの?!
「お客さん、どうしたんですか?」
とりあえず宿泊客なので、僕は木陰から出て声をかけてみた。
全裸で呆然としながら月を見上げていた男性客は、僕の声に気付いて振り返る。
「あ、警備員さん……」
男性客が、ポツリと呟く。
その直後、彼は号泣しながら僕に縋り付いた。
「た、助けて下さい!」
「へ?」
いきなり助けを求められて、僕は間抜けな声を出してしまった。
裸の男性客は号泣しながら、事情を話し始める。
「妻に……妻に部屋から締め出されてしまったんですよぉ~」
「……えーと、どうしてそんなことに?」
「俺、酔っ払って服を脱いで庭に出たみたいで、怒った妻が鍵を閉めちゃったんですぅ~」
「そ、それはお気の毒ですね」
奥さんの怒りも分からなくはないけど。
このまま裸で庭にいられたら困るから、僕は一旦一人でフロントへ行き、夜勤スタッフに事情を話してルー厶キーと浴衣を借りた。
「とりあえず、これ着て下さい。もう裸で外に出ちゃ駄目ですよ」
「はい、すいません」
男性は浴衣を羽織り、僕に頭を下げて部屋へ帰っていった。
奥さん、許してくれるといいね。




