表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/244

ep04:先輩たちとダークマター

 ツルツルモチモチの麺を食べ終える頃。

 ふと視線を感じて横を見たら、他のテーブルで食事をとっていた先輩たちが、みんなこちらを見つめていた。

 先輩たちは、何かに驚いたように、目を真ん丸にしている。

 視線は、僕たちの手元にある木製の深皿に向けられていた。


(パスタが珍しいからかな?)


 キョトンとしながら、僕はそう思った。

 先輩たちはダバーッと涙を流したかと思ったら、一斉にこちらへ走ってきて僕を取り囲んだ。


「えっ?!」

「ウォル……」

「お前……」

「料理……」

「できる子だったのかぁぁぁ!」


 先輩たちは僕の周囲で跪き、涙を流しながら崇めるように見上げてくる。

 僕の隣に座って骨付き肉を齧っていたアウラウダや、向かいの席で麺をすすっていたラフォルムとティミッドが、ドン引きして固まった。


(あ、ダークマター……)


 先輩たちがいたテーブルをチラッと見た僕は、心の中で呟く。

 もはや何の食材を使ったか分からない、漆黒の塊がテーブルに置かれている。

 自炊しろと言われてこの世の終わりみたいな顔をしたわけが、今分かった。

 この人たち、ダークマター製造職人なんだ。


「ああ、神は我らを見捨てなかった……」

「ウォル、君はイリキーヤ様が遣わした天使に違いない」


 先輩たちの目が、ウルウル潤んだかと思えばキラキラと輝き始める。

 いや、僕は転生者だけど、神様には会ってないし、天使じゃないと思うよ。

 困惑していたら、先輩たちの腹が一斉にグゥ~ッと大合唱した。


「……えーと……先輩たちの分も、作りましょうか?」

「「「お願いしますっ!」」」


 戸惑いつつも言ってみたら、先輩たちが声を揃えて即答する。

 僕は食べ終えた食器を流しに置くと、二十人分のパスタ作りに取り掛かった。


「宿舎の厨房、借りますね」

「ああ、構わない。使える物は何でも使ってくれ」


 団長の許可を得て、僕は建物内の厨房に入った。

 こちらは大人数向けの調理ができる設備が整っていて、作業効率が良い。

 厨房の過熱調理器具には、火の魔石が使われている。

 魔石はこの世界でのエネルギー源で、一般家庭でもよく使われるものらしい。


 麺の生地は、大きなボウルと木ベラで捏ね上げる。

 ボウルに大きな布巾を被せて、捏ね上げて丸めた生地を休ませた。


 串焼き用のグリルで骨付き肉を炙り、大鍋に沸かしたお湯で煮て出汁をとる。

 スープができる頃には、生地もちょうどよい寝かせ具合になっていた。

 生地をのばして切る作業も、広い調理台やまな板があるので、やりやすい。


 次は麺を茹でよう。

 厨房には複数の大鍋があり、ラーメン屋などで使われている「テボ」みたいな取っ手付きザルもあった。

 ラーメン屋やそば屋みたいに、一人分ずつテボに入れて次々に茹でていこう。


「手伝おうか?」

「うん。助かる」

「何すればいい?」

「茹でたやつを器に入れて渡すから、スープを注いで」

「分かった」


 アウラウダが手伝いに来てくれて、効率UP。

 僕はテボに入れた麺を茹でて、湯切りして器に盛って渡す。

 アウラウダはそこにスープを注いで、調理台に置いた。


「できたやつ運ぼうか」

「うん。頼む」


 ラフォルムとティミッドも来てくれて、更に効率UP。

 アウラウダがスープを注いだら、二人が配膳カウンターまで運んでくれた。


「おおお! 美味そう!」


 先輩たちは配膳カウンター前に並んでいる。

 カウンターに置かれたスープパスタを、待っていた先輩たちが嬉しそうに受け取った。


「美味い!」

「このツルツルモチモチが、たまらん!」

「スープも絶品だ!」


 先輩たちは大絶賛しながら、麺をすすり、肉を頬張り、スープの一滴まで残さずペロリと平らげた。

 こんなに喜んでくれるなら、作った甲斐があるな。

 今後は僕がみんなの食事を作ることになりそうだけど。


(……あれ?)


 厨房内からカウンター越しに食堂を見回していた僕は、食堂の窓の外にいる人物に気づいてしまった。

 でっぷり太った意地悪そうなオッサンが、ヨダレを垂らしながら室内を見つめている。


(領主様? なんであんなところに……)


 不思議に思いつつ見ていたら、オッサンもとい領主様と目が合ってしまった。

 僕が見ていることに気づいた領主様は、ハッと我に返って叫ぶ。


「見習いの小僧! 城の厨房を使うことを許可してやるから、私にもそれを作れ!」

「「「?!」」」


 領主様が大声で叫んだので、食堂にいる先輩たちがビックリして固まる。

 僕と見習いメンバーはポカーンとしてしまった。


「小僧、お前の名を名乗れ」

「ウォルクリスといいます」

「ではウォルクリス、私についてこい」

「はい」


 まさか、スープハスタを作らせるために呼ばれるとは……。

 領主様に命じられ、僕は大人しくついていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ