ep54:強力粉と薄力粉で作る団子
「これは、どうやって思いついたのですか?」
「イリキーヤ様が教えてくれました」
不思議そうに聞くモルガニットに、僕はイリキーヤ様のお告げだということにした。
春の宴で僕がイリキーヤ様の加護もちだと知ったのは貴族だけで、街に住む平民には伝わっていない。
なので、必要なときだけ神様の名前を借りている。
実際は、僕の幼少期の記憶が元なんだけどね。
僕の祖母が作る「ぜんざい」は、餅でも白玉粉でもなく「小麦粉の団子」が入っていた。
薄力粉と水を混ぜて練って、耳たぶくらいの硬さになったら、小豆と砂糖を煮た汁の中にスプーンで掬って落として、団子に火が通るまで煮る。
餅や白玉団子みたいなモチモチ感は無いけれど、それはそれで美味しかった。
僕にとっては小麦粉の団子が入ったものが「ぜんざい」だった。
大人になり、パスタやうどんを強力粉から作る方法を知り、団子を強力粉で作ってもいいかも? と思って作ったのが、モルガニットに渡したレシピだ。
材料は、強力粉、薄力粉、黒砂糖、赤いんげん豆、水。
【団子】の作り方。
強力粉、薄力粉、黒砂糖に、水を少しずつ混ぜて練る。
強力粉と薄力粉は同量くらい、砂糖は一割くらいの比率にする。水は硬さを見ながら。
耳たぶくらいの硬さになるまでよく捏ねたら丸めて、沸騰したお湯で茹でる。
【ぜんざい】の作り方。
赤いんげん豆を洗って水に浸しながら一晩おく。
浸水を済ませた赤いんげん豆を、柔らかくなるまで茹でる。
柔らかくなったら、豆と同量の砂糖を少しずつ加え、弱火で煮詰める。
「売るときは、ぜんざいの中に団子を入れて下さい」
「【ダンゴ】に【ゼンザイ】、初めて聞く料理です」
「これを氷魔法で冷やして出せば、売れると思いますよ。冬場は温めて出してもよいです」
「ありがとうございます!」
赤いんげん豆で作る冷たいぜんざいといえば「沖縄ぜんざい」がある。
沖縄ぜんざいはかき氷をたっぷり乗せて食べるものだが、そうするとマリーヌの負担が大きくなるのでやめておこう。
「見本を作ってここへ届けるので、ちょっと待ってて下さいね」
「はい!」
今日は休みで調理はしないつもりだったが、こうなったら仕方ない。
僕はマリーヌとモルガニットを診療所に残して宿舎へ向かった。
アウラウダが、その後に続く。
「ゼンザイ、俺も手伝うから、食べていい?」
「いいよ」
アウラウダは珍しいスイーツに興味津々だ。
大鍋でまとめて作ればいいし、もうみんなの分も作っちゃおう。




