ep53:マリーヌとモルガニット
「魔法を使い過ぎたんだねぇ。いくら魔力ポーションを飲んでいたって、延々と使い続けたら精神的に疲労するさ」
診療所の老医師は、僕の予想通りの診断を告げる。
ベッドに横たわって眠り続ける水色髪の少女は、しばらくそのまま寝かせておけばいいらしい。
「すいません、あたしもマリーヌも、まさかあんなにお客さんが来るなんて思わなくて……」
店を閉めて大急ぎで駆け付けた桃色髪の少女が言う。
二人は、今日が初めて露店を開いた日だった。
「マリーヌを助けてくれてありがとうございます。お二人は騎士様ですよね、お名前を聞いてもいいですか? あたしはモルガニットといいます」
「騎士見習いのウォルクリスです」
「同じくアウラウダです」
水色髪の少女はマリーヌ、桃色髪の少女はモルガニットというらしい。
二人はこの街で生まれ育ち、スイーツのお店を持ちたくて露店を始めたとのことだった。
「今日はよく晴れて初夏の気温だったからねぇ。氷菓子を出せば飛ぶように売れるさ」
老医師が苦笑する。
確かに、今日はちょっと動けば汗ばむ陽気だ。
僕たちも氷菓子に引き寄せられて並んだし。
「一日の販売数を決めませんか? それで買えなかった人には次回の優先販売券をあげたらいいですよ」
「優先販売券、ですか?」
「はい。ついでに優先販売の時間帯を決めて、その時間に来て下さいって言うんです。一般販売前にしたらいいと思います」
僕は日本での知識から、無理のない販売をオススメしてみた。
「なるほど。マリーヌが回復したら、やってみます」
「モルガニットさんは、氷魔法は使わないのですか?」
「あたしは火魔法以外は上手く使えなくて。冬になったら焼き芋の調理をする予定なんです」
「焼き芋! 俺大好物です。冬になったら買いに行きますね」
冬の予定を聞いた途端、アウラウダが目を輝かせた。
ウォルクリスの記憶によれば、アウラウダは甘くてホクホクした焼き芋が大好きらしい。
季節によって売るものを変えるのか。いい考えだな。
そういや、日本の焼き芋屋って、夏はかき氷屋になってたような……。
日本の露店や移動販売を思い浮かべているうちに、僕はかき氷よりも氷の消費を抑えられるスイーツを思い出した。
「そうだ。もしもかき氷以外でもよければ、氷の消費が少なく済むスイーツにしませんか?」
「それは、冷たくて甘い物ですか?」
「はい。レシピを書くので、マリーヌさんが回復したら作ってみて下さい」
僕は幼少期に祖母が作ってくれたスイーツを元にレシピを書いて、モルガニットに渡した。




