ep52:異世界かき氷の屋台
領主様ほどではないけれど、僕も美味い物を食べるのは大好きだ。
アウラウダと共に街へ向かった僕は、魔法で氷菓子を作る屋台を見つけた。
「凄い行列ができてるな」
「昨日の見回りのときは無かった店だから、今日オープンしたのかも」
僕たちも冷たいスイーツが食べたくて、長い列の最後尾に並ぶ。
屋台は横に長く、スタッフはまだ若い女の子が二人いる。
水色髪の女の子が魔法を使って氷を作り出し、粉砕の魔法で粉々にして器に盛る。
桃色髪の女の子がそれにシロップをかけて、カットフルーツを添えて渡している。
空中に出現した氷の塊が砕けて器に降り注ぐ様子は、マジックショーみたいで見ていて飽きない。
(いいなぁ、あれ。僕にもできるかな)
所謂かき氷なんだが、魔法を使うところが異世界らしくて良い。
僕は進んでいく列についていきながら、そのパフォーマンスを眺め続けた。
攻撃魔法とは違い、生活魔法はそれほど魔力を消費しないとベルさんから習った。
しかし、長い列ができるほどの数をこなせば、消費する魔力はかなりのものになるんだろう。
よく見れば、水色髪の少女の背後には、小さな空き瓶が並んでいた。
(……なんだろう……社畜オーラを感じるんだが……)
オッサンの目には、魔力回復ポーションらしきものを飲みながら氷菓子を作り続ける女の子が、ブラック企業で働く社畜に見えてしまう。
まだ若いのに、げっそりやつれてるじゃないか。
あんまり無理すると死ぬぞ。
お亡くなりになったら、異世界転生しちゃうぞ。
死んでないのに異世界の少年になった僕が言うのも何だけど。
「お待たせしました。銀貨1枚です」
桃色髪の少女は気づいていないのか、笑顔で接客を続けている。
水色髪の少女は、近くで見たら目が虚ろになっていた。
(おいおいおい、意識半分飛んでるぞ)
心配になった直後、少女は急に身体の力が抜けたように倒れていく。
背後にあるテーブルへから、空き瓶が次々に地面へと落下して割れた。
「きゃー!」
桃色髪の少女が悲鳴を上げる。
僕はそれに構わず、屋台の裏に回り込んだ。
水色髪の少女は、テーブルの上へ仰向けに身体を投げ出したような体勢で気絶している。
足元には、割れた小瓶が散乱していた。
「お店、一旦閉めた方がいいですよ。この子もう限界みたいです」
僕は机からズリ落ちかける水色髪の少女を抱えつつ、呆然としている桃色髪の少女に告げた。
過労なら、休ませてあげれば回復する筈。
「診療所に運んでおきます。お店片付けたら、来てあげて下さい」
「は、はい」
もう一度声をかけると、呆然としながらも桃色髪の少女はようやく頷いた。
僕はグッタリした女の子を横抱きにして歩き出す。
アウラウダが困惑しながらついてきた。
「えーと……その子、どうしたんだ?」
「疲れすぎて気絶したんだよ」
アウラウダの問いに、苦笑しつつ答える。
まさか異世界の屋台で、過労死しそうな人に会うとは思わなかったよ。




