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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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sideウォルクリス05

 朝起きても、翔太郎の身体は軋まなくなった。

 今までよりも動きやすい。

 張り切って腹筋しよう。

 枕元には、翔太郎が書いたメモが置いてある。


『気を付けろ。僕の右手が火を吹くぜ』


 え? 何? どうしたの?

 困惑していると、翔太郎の記憶が流れ込んできた。


 なるほど。

 僕の世界の魔法は、こちらでも使えるのか。

 僕たちの身体には二人分の魔力が宿っているから、上位の魔法も使えるようになるらしい。


 ……ということは……


 身体強化ラァンフォルセ・ル・コールが使える?!


 身体強化は、父さんが騎士団所属時代に習得した魔法だ。

 今でも畑仕事の効率を上げるために使っている。

 どうやるの? って聞いたら、「子供のうちは魔力が低くて使えないぞ」って言って、使い方だけ教えてくれた。

 魔力が増えた今なら、きっと使える。


 そうだ。

 あの鹿を追い払うときに使ってみよう。


 僕は朝の見回りを済ませて、朝ごはんを食べて、鹿が現れる午前10時より少し前、枝垂桜を見張りに来た。

 低木の茂みに隠れて待機する。

 翔太郎の記憶にある「短距離走」の「クラウチングスタート」姿勢で、動かずに鹿が現れるのを待った。


(腰から下を重点的に強化してみよう)


 僕は父さんから教わった通りに、魔力を足へと集中させた。

 身体強化は、部分的なものの方が強化率が高くなる。

 ダッシュの速度を上げるため、僕は腰から下の筋肉を強化した。


(きた!)


 やがて、桜の葉を狙う鹿が、木々の間からゆっくりと出てくる。

 毎回追い払われてもしつこく来るのは、瑞々しい若葉が茂る枝垂桜が余程魅力的なんだろう。

 鹿はキョロキョロと辺りを見回した後、民宿の敷地内へと入ってくる。


 〈今だ!)


 僕は勢いよく飛び出した。

 茂みの中からいきなり飛び出してきた僕を見て、鹿が大きく飛び跳ねる。

 慌てて逃げ出す鹿に、僕は余裕で追いついた。


「遅いよ」


 僕は鹿と並走しながら言う。

 鹿はギョッとしてパニックになり、必死で走るが逃げきれていない。


「狩るなって言われてるから逃がしてあげるよ。じゃあね」


 僕は鹿の背中を叩いた後、立ち止まる。

 鹿はもう我を忘れている感じで、木の枝にぶつかりながら走り去っていった。


 これで懲りて来なくなるかな?

 でもそうすると、翔太郎の任務完了になるんだろうか?

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