ep49:残り物争奪戦
騎士団メンバーのまかないを作るとき、僕はいつも多めに作る。
カツは残ってもアレンジができるから、人数分の二倍くらい作った。
しかし、体育会系男子の食欲は、余裕でそれを消費する。
いつものように全員分の盛り付けと配膳を終えた後、大皿盛りで自由に取って食べられるようにしたら、待ってましたとばかりに先輩たちが殺到した。
「順番だ! 順番!」
「そんな一度に取るな!」
「あ! それ俺が取ろうと思ったのに!」
えーと……。
この人たち、確か貴族の令息だよね?
なんで平民の大家族みたいにオカズを取り合うんだ?
「ウォルんとこも家族多くて凄かったけど、それ以上だな」
「そうだね」
アウラウダが呟く。
僕は苦笑しながら応えた。
ラフォルムとティミッドも、先輩たちの勢いに軽く引いている。
ウォルクリスの記憶が脳裏に浮かぶ。
貧しい農家の次男である彼は、幼少期から兄弟たちとオカズ争奪戦をしていた。
故郷を出る頃には五人兄弟になっていたから、それはそれは激しい食べ物争いだったようだ。
それの四倍規模のオカズ争奪戦が、配膳カウンターの向こう側で開催されている。
「ウォル、もうないのか?」
「ないです」
やがて大皿から最後のカツが消え、物欲しそうに問いかける先輩たちがいた。
僕が答えると、先輩たちはガーンと打ちのめされた顔になっている。
「そうか……ごちそうさま」
「凄く美味しかったよ」
「こんなにサクサクして美味い揚げ物は初めてだ」
ションボリしながらも一声かけて、先輩たちが背を向ける。
筋肉豊富な高身長男たちの背中に、哀愁が漂っていた。
「これは他の肉を使っても美味しいので、近いうちに別バージョンを出しますよ」
僕が別バージョン予告をしたら、彼らは一斉に顔を上げて振り返る。
期待に満ちたキラキラする視線が、僕に集まった。
「ほ、本当か?!」
「はい。雉や山鳥、ホロホロ鳥の肉を使っても美味しくできますよ」
「おお!」
僕の言葉に、先輩たちのテンションは爆上がりした。
カツは日本でも人気メニューだけど、初めて食べた人たちは次への期待が半端ないな。
次は選べるソースにしようかな?
経費で大根や柑橘系果実を買って、鰹の血と合わせて、おろしポン酢醤油みたいにしてもいいかも。
「タレも別バージョンが作れますよ。経費使ってもいいですか?」
「勿論だ!」
団長に言ったら即答された。
別バージョンを食べたい団長は、先輩たちに向かって告げる。
「よし! 午後から狩りに行くぞ!」
「「「おー!」」」
全員が拳を突き上げて応えている。
もう、今すぐ森へ行きそうな勢いだ。
狩りもいいけど、街の見回り、忘れないでね。




