ep48:先輩たちと味噌カツ
溜め込まれた洗濯物を洗い終えた後。
ベルさんはスッキリした顔でお城へ帰っていった。
不慣れな僕の洗浄魔法で洗濯物ごと洗われた先輩たちが、綺麗になって転がっている。
「せんぱーい、起きれます?」
「……無理……」
僕は倒れた先輩の横にしゃがみ、声をかけてみた。
弱々しい声が返ってくる。
三半規管をやられただけだから、ほっとけば復活するだろう。
「じゃあ、無事な人だけ先にごはん食べましょう。今日のお昼は【ミソカツ】ですよ」
「ミソカツって何だ?」
「肉に衣をつけて揚げて、甘辛いソースをかけた料理です」
「ほお。聞いただけで美味そうだ」
僕は昼食のメニューを予告して歩き出す。
無事だった先輩たちと、見学で済んだ見習いメンバーが続く。
「ま、待ってくれ!」
「お、俺も食べる!」
地面に転がっていた先輩たちが飛び起きた。
慌てて一緒についてくる。
この人たちの食欲は、三半規管を制するようだ。
「じゃあ、洗濯物を部屋に片付けたら、食堂に来て下さい」
「よしみんな、急げ!」
先輩たちが洗濯物を抱えて走り出す。
……急いでも、料理はすぐにできないよ?
僕と見習いメンバーは、ちょっと呆れつつそれを見送った。
◇◆◇◆◇
宿舎の厨房での調理は、アシスタントが三人いるので効率が良い。
僕は猪肉におろし生姜をもみ込んで、後の衣つけはアウラウダたちにやってもらった。
生姜をもみ込んだ猪肉に、アウラウダが薄力粉をまぶす。
薄力粉をまぶした猪肉に、ラフォルムが溶いた鶏卵をまぶす。
溶き卵をまぶした猪肉に、ティミッドがパン粉をまぶしたら、衣つけは完了だ。
「変わった衣だな」
「三重になってるのか」
「パン粉って揚げ物にも使えるのか」
衣つけの説明をしたら、三人は珍しがりつつも、やり始めたら手際が良くて速い。
僕はその間に味噌ダレを作り、サラダ用の春キャベツ(シュー・ドゥ・プランタン)を刻み、白飯を炊き上げる。
ふと視線を感じて振り返ると、配膳カウンターの向こう側に先輩たちが群がっていた。
「……先輩たち。見てても料理はすぐできませんから。座ってて下さい」
「「「はい」」」
僕が呆れ顔で言うと、先輩たちは素直に席に着く。
なんかもうあっちが子供みたいだよ。
精神年齢はアラフォーの僕の方が上かもしれんけど。
カツが揚がるジュウジュウいう音がし始めると、先輩たちがソワソワする気配を感じた。
ガタッと椅子が動く音も聞こえる。
「まだです」
「「「……はい……」」」
待ちきれないのは分かるが、もうちょっと待ってほしい。
失礼だけど、ワンコを待たせる気分になってきたよ。




