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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep47:洗浄魔法を覚えよう

 味噌カツの実食をしてもらった後。

 宿舎へ戻ろうとしたら、ベルさんが一緒について来た。

 何だろう? と思っていたら、彼女はポツリと言う。


「そろそろ、ウォルくんに洗浄魔法ネトワイエを覚えてもらうわ」

「はい」


 洗濯機の無い世界で、衣類を物理のみで綺麗にするのは重労働だ。

 僕は井戸の側に桶を置いてゴシゴシやるのは、そろそろ卒業したいと思っていた。

 便利な洗浄魔法が使えるのは嬉しい。


「じゃ、練習にちょうどいいものがあるから、行くわよ」


 ベルさんの表情が、何か気合を入れるようにキリッとする。


 練習にちょうどいいものとは?

 彼女がズンズンと歩いて行った先は、騎士団の宿舎だ。


「みんな! 夕飯の前に洗濯よ!」


 ベルさんは宿舎の玄関扉をバンッと左右に大きく開き、女指揮官のように大声で命じた。

 途端に、ほぼ全ての部屋の扉が一斉に開いて、先輩たちが顔を出す。


「さあ、とっとと出しなさい!」


 女指揮官……というより、オカンか?

 有無を言わせぬ迫力に、先輩たちは慌てて一旦部屋に引っ込み、汚れた衣類の山を抱えて出てくる。


「それを持って、洗濯場に集合よ!」


 ベルさんは回れ右で玄関の外に出る。

 僕もそのすぐ後に続く。

 衣類を持った先輩たちが、その後からゾロゾロ出てきた。

 見習いの三人も、何事かと思いながら出てくる。


「二列渋滞、並べ!」

「「「はいっ」」」


 宿舎の外にある洗濯場で、ベルさんが命じる。

 先輩たちが、ザザッと整列して二列に並んだ。


「まったく。ちょっと放置するとすぐ溜め込むんだから」


 ベルさんが、屋外洗濯場で両手を腰に当ててプンプン怒っている。

 先輩たちは、何故か正座して項垂れていた。


「ウォルくん、洗浄魔法は、これよ」


 そう言うと、ベルさんは自分の前に並ぶ先輩たちの一番前の人に片手を向ける。

 その手から水が湧き出して、洗濯物を包むとグルグル渦巻き始めた。


(……洗濯機だな)


 イメージは、すぐに掴めた。

 洗剤は入ってないのに、汚れた服が綺麗になっていく。

 洗濯機よりも便利なのは、洗濯が終わったら衣類の水分は除去されて、乾いていることだ。

 衣類の汚れを、水が絡めとって離れていく感じに見える。


「やってみて」

「はい」


 僕も、一番前の人に片手を向ける。

 しかし、衣類だけでなく、先輩も巻き込んで回してしまった。


「……あ」

「大丈夫よ、目を回すだけだから」


 不幸な先輩が、首から下を水に包まれてグルグル回される。

 後ろで待機する先輩たちが、ちょっと青ざめていた。

 ベルさんだけは平然としている。


「じゃ、次やっちゃって」


 目を回して地面に転がる先輩を放置して、ベルさんが言う。

 洗濯物の山を前にした彼女は、普段の優しい美少女とは別人のように見える。

 こうして、何人かを犠牲にして、僕は洗浄魔法を習得したのだった。


 ごめんね、先輩たち。

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