ep44:見習い騎士VS猪
「次はウォルとアウラ、二人で協力してやってみな」
バスチアン先輩に言われて、僕とアウラウダは見つけた猪に狙いを定める。
体格が良くて筋肉豊富な先輩たちとは違い、小柄な僕たちでは正面からぶつかれば力負けするだろう。
だから僕たちは、遠方と樹上からの攻撃に出た。
「誘導、任せたぜ」
「うん」
木登りが得意なアウラウダが、スルスルと大木の樹上へ登っていく。
僕は足元から野球ボールサイズの石を拾い、アウラウダがいる大木よりも少し下がった位置に立つ。
一人が猪に石をぶつけて気を引き、もう一人が樹上から猪の上に飛び降りて剣を突き刺す。
これは、ウォルクリスの記憶にある、村の畑を荒らす猪退治の方法だった。
(異世界の子供はワイルドだなぁ)
僕は心の中で呟きつつ、猪を見つめる。
投げる石は、猪に当たっても当たらなくてもいい。
野球の投球フォームを真似て、僕は猪めがけて石を投げつけた。
(おお、剛速球。甲子園出れるじゃん)
幼少期から野山を駆け回り、身体を鍛えてきた少年の投擲能力は凄かった。
そのパワーにオッサンの野球経験がプラスされて、150km/h以上出てそうな投石になっている。
石は猪の横っ腹を直撃した。
「ブギィッ!」
猪は甲高い声で悲鳴を上げた後、怒りのオーラを纏いつつこちらを睨む。
頭を低くしながら前足で地面を掻く仕草にも、今まで以上の迫力があった。
僕めがけて突進してくる猪は、上からの攻撃には気づかない。
アウラウダは、絶妙なタイミングで枝から飛び降りた。
小柄な少年の全体重が乗った剣が、猪の後頭部と背骨の繋ぎ目を貫く。
「ギィーッ!」
断末魔の叫びを森の中に響かせた猪は、崩れるように倒れて動かなくなった。
アウラウダが、軽やかにその傍らに着地する。
「おお、やるなぁ」
「見習いにしとくのが惜しい一撃だぜ」
バスチアン先輩とシャスール先輩が、笑顔でアウラウダを褒めている。
アウラウダは、ちょっと照れくさそうに笑みを返した。
「よし、これで肉は充分だな」
バスチアン先輩とシャスール先輩は、それぞれ倒した猪の血抜きを終えると、軽々と肩に担ぐ。
僕とアウラウダは猪の血抜きを済ませた後、太い木の枝に前足と後足を括り付けて二人がかりで担いだ。
リシュ領の猪は小型で、体重は成獣で約40~50キロ程度らしい。
本州の山にいるニホンイノシシの体重100キロ超えに比べると、かなり小柄だな。
ちなみにこの世界の重さの単位は、日本と同じ「キロ」で表す。
1キロの重さは、日本の1キロとほぼ変わらない。
「帰ってベルに解体してもらおう」
「「はい」」
先輩たちの後に続いて、僕とアウラウダも歩き出す。
みんな、戦闘能力凄かったなぁ。
え? 僕?
石投げただけですが何か?




