ep40:火食の神イリキーヤ様の加護
「火魔法はイメージしやすい筈よ。体内に満ちる魔力が燃料で、指先から出て発火すると思えばいいから」
ベルさんの説明は、ライターによる着火を知る僕には理解しやすい。
魔法のイメージは、ベルさんが使うところを実際に見たおかげで簡単だった。
(えーと、火の大きさはライターくらいで、薪に向かって飛ばすイメージで……)
中二病を患っていた子供の頃なら、カッコつけて詠唱とかしちゃったかもしれない。
しかし恥じらいを知ったオッサンは、不要な詠唱はしないのだ。
無詠唱の方が強そうじゃね? などと思うのは、ラノベ好きならではだろうか。
(おっ、火が出た!)
初めて魔法が使えた喜びに、心が弾む。
やったね、簡単じゃんって思いながら飛ばした直後、僕は想定外の現象に驚いた。
「え? え? 何?」
ライターくらいの小さい火が、指先から離れて飛びながら大きくなる。
直径2メートルくらいの火球が、竈を飲み込む。
竈は炎に包まれて見えなくなった。
「えええ?!」
「ああ、やっぱりねぇ」
驚愕する僕とは逆に、ベルさんは冷静だ。
彼女は掌から水の球を放ち、燃える竈を消火した。
「火力が出過ぎたわね、ウォルくん」
「すいません」
「想定内だから大丈夫よ」
火が消えた竈は、真っ黒にコゲている。
ベルさんは苦笑しながら言う。
そういや、多少失敗して物を壊しても大丈夫とか、最初から上手くいく人はほぼいないとか言ってたな。
「ウォルはイリキーヤ様の加護もちだから、火系統の魔法は普通の人より強くなるのよ」
「……それ、先に言って下さいよぉ」
ベルさんは笑いながら言う。
僕はジト目でベルさんを見た。
っていうか、イリキーヤ様は加護をくれたのか?
日本から精神を呼び寄せられただけかと思ってたよ。
「威力を抑えるには……そうね、魔力が体外に出る量を調整するといいかも」
「水道の蛇口から出る水量を調節する感じですか?」
「そう、それよ。ウォルくん魔力の例えが上手いわね」
魔法の威力の調節も、イメージが出来れば容易かもしれない。
「じゃあ、もう1回やってみて」
「はい」
2回目に使った魔法は、指先から出る魔力をチョロ出しの水くらいにイメージして放った。
小さな火球は、小さいまま薪へと飛ぶ。
竈は炎に包まれたりせず、薪だけが燃え始めた。
「できた!」
「あら、やるじゃない。二回目で成功なんてかなり優秀よ」
ベルさんが褒めてくれた。
僕はホッと胸をなでおろす。
竈を幾つも焦がさずに済んで良かった。
これで、今後はどこでも簡単に火おこしができそうだ。




