ep35:長粒米の炊き込みごはん
春の宴があった夜は、騎士団にも同じ料理が振る舞われた。
おかげで騎士団の夕食は作らずに済んだけど、いつもより精神的に疲れた気がする。
(殿下のお城っていったら、王都で王宮だよなぁ……)
あっさり話が決まったけど、平民が王城へ行くとか、ありなの?
王都は見てみたい。できればここでは手に入らない食材を買ってみたい。
王城は、騎士を目指すウォルクリスとしては、憧れの場所だろう。
しかし騎士として行くんじゃなくて、料理人として行くので、気分は微妙かもしれない。
(もしかしたら、包丁さばきから剣の腕を見込まれて騎士になるとか? ……ないよなぁ)
溜息をつきつつ、僕は宿舎へ帰る。
ベルさんに分けてもらった宴の残りの食材を使って、明日の朝食の準備を始めた。
貰った食材は、和風きのこパスタに使ったシメジとマイタケ、ピラフに使った長粒米。
鶏もも肉も分けてもらった。
宿舎には、干しシータケと、醤油代わりの鰹の血がある。
これで作れるものといえば、これだ。
炊き込みごはん!
干しシータケは、湯もどしにしよう。
スライスして40~60℃くらいのお湯に漬ければ、15分で出汁がとれる。
キュイス・ドゥ・プルは、炙っておこう。
鍋にリ・ロンを入れ、干しシータケをもどした出汁とル・サン・ドゥ・ボニートを混ぜたものを注ぎ入れる。
炙ったキュイス・ドゥ・プル、シメジ、マイタケ、シータケを上に乗せる。
蓋をして中火にかけ、沸騰したら弱火にして10~12分炊く。
火を止めて、そのまま10分~15分蒸らす。
蓋を開けて具とご飯をさっくりと混ぜ合わせて完成。
(炊き立ても美味いけど、これをお茶漬けにして食うのも悪くない)
僕は幼少期、夕食に炊き込みご飯が出ると、翌朝にはお茶漬けにして食べるのが常だった。
ほうじ茶を注いで食べるのが好きだったけど、お湯を注いで醤油をちょい足しするのもいい。
明日の朝は、僕ではなくウォルクリスが朝食を担当する。
記憶の共有がされてるから、炊き込みごはんにお湯かけて、ちょっと醤油垂らす食べ方は分かるだろう。
なんなら大鍋で雑炊みたいにして食べさせてやってもいいと思う。
蒸し器があるから、それで温めてもいいかもしれない。
(そういや、あっちは上手くやれてるかなぁ。鹿を狩るなとは手紙に書いといたけど)
僕はふと、民宿初鹿で警備をするウォルクリスがどうしているか気になった。
鹿肉の美味さを知る奴だけに、狩りたい衝動を抑えられたか気になるところだ。
結果は、明日の朝には分かるだろう。




