ep33:料理を広めよう
「では、宴を始めましょう。どうぞごゆっくりお楽しみ下さい」
領主様が、宴の開始を告げる。
お客さんたちは、期待に満ちた顔で料理が並ぶテーブルへと歩いていく。
注目を浴びているのは、スープパスタだ。
貴族たちですら食べたことの無い麺類が、注目の的となっていた。
「パスタは、このようにフォークに絡めると綺麗に食べられます」
僕はスープパスタが置かれたテーブルの隣に立ち、食べやすい方法を伝える。
ベルさんは会場内を見て回り、料理が少なくなると厨房へ指示を出しに行った。
「この細長いものは、どんな材料を使っているのですか?」
お客さんたちは貴族なのに、平民の僕に丁寧な口調で話しかけてくる。
ウォルクリスの知識によれば、イリキーヤ様の加護もちは、ありがたい存在らしい。
イリキーヤ様は火食の神、人類の祖先に火の使い方を教え、調理して食べる技術を伝えた神様だ。
「強力粉、鶏卵、オリーブ油、塩、井戸水を使っています」
広めるようにと神様に言われているので、僕は包み隠さず材料を伝える。
いっそ国中にパスタが広まってほしい。
「これは不思議な食感ですね」
「こんなツルツルモチモチした食べ物は初めてですよ」
「パンを作る粉からできているなんて驚きですわ」
お客さんたちは、まず食感に驚いている。
パンとほぼ同じ材料から作られていると聞いて、驚く人も多かった。
「イリキーヤ様はこの料理を人々に広めてほしいと言っておられました。作り方をお伝えしますので、皆様の領地でも広めて頂けませんか?」
「勿論ですよ。ぜひ作り方を教えて下さい」
「こんなに美味しい物を、いつでも食べられるなんて最高ですね」
麺類の無かった世界に、パスタの登場は革命的だったかもしれない。
色んなスープにもソースにも合うし、バラエティ豊富な料理になると思う。
一方、長粒米を使ったピラフは男性陣に人気があった。
やはりガリバタ醤油は「男メシ」なんだろう。
とはいえ女性も美味しいと言ってくれたので、不人気ではなかった。
「大蒜は、食べると口の臭いが……」
「それでしたら、これで消せますよ」
貴族の令嬢には、ちょっとハードルが高かったようだ。
通りすがりにそれを聞いたベルさんが、そっと何かを差し出した。
「りんご果汁から水分を除去して作った物です。大蒜の臭いの元を分解消去して口臭を防ぎますよ」
ベルさんが差し出したものは、紙に包まれた粉状のサプリメントだった。
ニンニクの臭い消しといえば、地球でも食後にリンゴ(皮ごと)や乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)の摂取、緑茶を飲むことが知られている。
この世界でも、同じ効果があるのかな?
「まあ、それなら安心して食べられますわね」
ベルさんのサプリメントのおかげで、ガリバタ醤油も広まりそうだ。




