ep01:森の中で食材集め
「みんな起きろ、領地に入ったぞ」
御者を務めていた少年マクシムの呼びかけで、僕たちは一斉に起き上がった。
幌の外を覗いてみれば、馬の頭越しに緑の木々が見える。
森の中に入ると、馬車は停車した。
「辺境での暮らしは自給自足だ。まずは食材を確保しろ!」
「川で魚が獲れるぞ。釣り竿はそこに置いたから使ってくれ」
「弓が得意な者はいるか? フェザンでもパンタードでも狩ってこい」
道具を並べた隣に立ち、先輩たちが呼びかける。
馬車に立てかけられた釣り竿と弓矢を見て、僕とアウラは弓矢を選んだ。
前世の僕は、学生時代に弓道部に所属していた。
この世界の弓は、和弓というより洋弓に近いけど。
「ウォル」の記憶によれば、村の近くの森でアウラと一緒に狩りをした経験があり、その際に弓を使っていた。
「いくぞウォル、どっちがたくさん獲れるか競争だ」
はりきるアウラと共に、弓矢を携えて獲物を探す。
低木の茂みに隠れ、息をひそめて耳をすませば、小動物が草を踏み分けて歩く音が聞こえてくる。
最初の獲物は、アウラが仕留めた。
茶色の斑模様の身体に長い尻尾、美味しいと評判のフェザンだ。
(……もう少し、もう少し……そこだ!)
次の獲物はパンタードで、僕が仕留めた。
パンタードは黒地に白い斑点があり、尻尾が短く、丸みを帯びたずんぐりとした体型をしている。
この鳥も美味しいと人気の食材で、祝いの席などで丸焼きにして出されることが多い。
僕たちは10羽ずつフェザンを仕留めて、最後にアウラがパンタードを仕留めたところで集合時刻になり、競争は引き分けに終わった。
「おお、大量じゃないか」
「ベルが張り切って調理してくれそうだな」
血抜きした獲物を束ねてぶらさげて来た僕たちを見て、先輩たちは満足そうに笑う。
ベルって誰だろう?
食堂のおばちゃんかな?
「よーし、とりあえず食材は確保した。宿舎に向かうぞ」
隊長が大声で言い、僕たちは荷車に獲物を積み込むと、弓を返して元いた馬車に乗り込んだ。
森を抜けると、大きな建物が見えてきた。
頑丈そうな石造りの城が、これから仕える領主様が住まう場所だろう。
その城の手前にある木造の建物に近づくと、馬車の列は一斉に止まった。
「来たか。やっと交代だな」
「じゃあ、後は任せたぜ」
建物の中から騎士服を着た人々が出てきて、馬車に乗ってきた人々と入れ替わりに乗り込む。
騎士団は基本的に一年交代で、毎年春にこうしてメンバーが入れ替わるらしい。
「おいおいどうした、随分やつれてるじゃないか」
馬車から降りた先輩騎士が言うように、建物から出てきた騎士たちは皆、やつれているように見える。
ここの任務は、思ってたよりハードなんだろうか?
「あぁ、最近ロクなもん食ってなくてな……」
「どうしたんだよ? リシュ領といえば、美味いもんの宝庫だろ?」
「……まあ、すぐに分かるさ」
やつれた騎士たちはあまり多くは語らず、馬車に乗り込むと去っていく。
今日からここで暮らすことになる僕たちは、それぞれの荷物を背負って建物の中へ入った。




