PROLOGUE
なんか、揺れてる……。
ガラガラと車輪が回る音がする。
パカポコと馬の蹄の音がする。
身体の下に敷いているのは、毛布?
身体の上にかけているのも、同じ肌触りの毛布っぽい。
(……え? なんで?)
まどろんでいた僕の心に、疑問が生じる。
起き上がって見回すと、そこは幌馬車の中だった。
自分の他に三人の少年がいて、毛布に包まり横になっているのが見える。
(自宅のベッドで眠った筈なのに、何故こんなところに?)
おまけに、身体が一回り小さくなったような違和感がある。
ふと手を見れば、潤いの足りないオッサンの手ではなく、肌のキメが細かくて瑞々しい子供の手になっている。
でも、掌はマメだらけで少し痛い。
「……ん~……なんだよウォル、まだ着いてないだろ……?」
毛布に包まって隣で寝ている少年が、寝ぼけた声で言う。
はっきりと目が覚めると共に、自分ではない誰か記憶が、泉のように僕の意識の片隅に湧き上がる。
それは、一人の少年の人生の記憶だった。
【僕】の名前はウォルクリス、親しい人は「ウォル」と呼ぶ。
【僕】は、野山に囲まれた田舎の小さな村で生まれ育った。
父さんは辺境騎士団に所属した後、引退して田畑を耕す農民になった。
母さんは農家の娘で、父さんと結婚して一緒に畑仕事をしている。
【僕】は五人兄弟の三番目で、上には兄と姉、下には弟と妹がいる。
隣で寝てるのは、同じ村で生まれ育った幼馴染のアウラウダ、【僕】は「アウラ」と呼んでいる。
アウラの向こう側で寝ている二人は、隣村のラフォルムとティミッドだ。
「今起きたってやること無いんだから、寝とけよ」
「うん」
アウラに言われて頷き、とりあえず横になる。
隣から、すぐに寝息が聞こえ始めた。
この国の男子には、兵役の義務がある。
僕たちは12歳になったので騎士団に入り、見習い騎士として辺境の領主に仕えることになっている。
今乗っているのは、その配属先に向かう騎士団所有の馬車だ。
幌に遮られて見えないけれど、同じ配属先に向かう先輩騎士たちの馬車も複数台並んで進んでいた。
(転生した? でも、死んだ覚えは無いし、トラックに轢かれてもいないような?)
日本での最後の記憶では、仕事から帰っていつも通り布団に入って寝ている。
ウォルとしての記憶では、村に来た迎えの馬車に乗り込み、配布された二枚の毛布を使って寝ていた。
眠っただけで異世界転生というパターンは……うん、創作界隈では割とあった気もする。
(まあいいか。慌てても騒いでもどうにかなるもんでもないし。異世界転生だと思って生活しとこう)
ウォルとして生まれ育った記憶もあるし、言葉も通じるし、生活に困ることは多分ないと思う。
手はマメだらけだけど、若いし健康だし体力あるし、問題なさそうだ。
異世界生活をあっさり受け入れる僕は、環境適応力が高い性格だった。
本作は、アルファポリスで「辺境騎士団のまかない料理~領地は食材の宝庫です~」というタイトルで連載中の作品です。
アルファポリス側の方が先行しております。
早く続きが読みたい方は、アルファポリス版をどうぞ!




