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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep29:新品のコックコートと神様への祈り

 お城の中。

 僕は今まで入ったことがない客室へ連れていかれた。


「まずは身なりを整えないとね。メアリ、エマ、しっかり洗っちゃって」

「「はい」」


 客室に入った途端、僕は二人の侍女に浴室へ引きずられていく。

 ベルさんはソファに座り、僕が洗い上げられるのを待つ構えらしい。


「え? え? ちょっと待って」

「洗う時間だけ待ってあげる」


 焦る僕に、ベルさんが冷静に答える。

 洗うのを待ってと言ったんだが、誰も待ってくれない。

 異世界転生もので、貴族に転生した日本人が侍女にお世話されるのを恥ずかしがる描写があるが、今まさにそれ。


 っていうかウォルクリスは平民だろ?

 なんでメイド服着た女性二人に洗われるんだ。


 一人用の浴槽に張られたお湯は、レモングラスに似たハーブの香りがする。

 頭がスッキリしつつも落ち着いてくる。

 この香りの効果かもしれない。


 侍女たちは僕を洗い終えると、肌触りの良いバスタオルで拭きあげて、真新しい服を着せた。

 真っ白い服……どっからどう見てもコックコートである。

 貴族の子みたいに洗い上げるから、そっち系の服を着せられるかと思ったら、新しいけど普通の白衣だった。


「うん、いいんじゃない。次行くわよ」


 そう言うと、ベルさんは僕の手を引いて、次の場所へと引っ張っていく。

 次に連れて行かれた場所は、立派な祭壇の前だった。

 祭壇には、白くて大きな女神像がある。

 女神像の髪は長く、足元の台座まで届いていた。


「まずはラ・テール様に、豊穣への感謝の祈りを捧げるのよ」

「はい」


 ベルさんが言う神様の名前は、ウォルクリスの記憶にある。

 ラ・テール様は大地を創った神様で、豊穣も司る。

 お祈りのスタイルも、記憶にあった。

 僕は胸の前で両手を交差して目を閉じ、感謝の言葉を心の中で呟く。


 ……筈だったが、質問になってしまった。


(ラ・テール様すいません、僕はどうしてここにいるんでしょうか?)


 ラノベとかなら、ここで神様が出てきそうだが。

 何も反応は無かった。

 この入れ替わり現象に、神は関与していないのだろうか?


「次はイリキーヤ様に、火と食への感謝の祈りを。ウォルは加護を貰っているから、そのことも感謝するのよ」

「はい」


 続いてベルさんが僕を連れていったのは、お城の食堂だった。

 おそらく、リシュ家の人々が食事をとる場所なんだろう。

 領主様はいつも厨房で食べていたから、僕はここの食堂に来るのは初めてだ。


(珍しい配置だな)


 食堂のテーブルが、祭壇近くに置かれている。

 神様と一緒に食事をするイメージだろうか?

 食堂の奥が祭壇になっていて、祭壇には椅子に座った姿の神像が設置されている。

 本来なら当主が座る位置に神様の席があり、当主を含めた家族はその左右の席に着くらしい。


(イリキーヤ様すいません、異世界人とは言えないので、加護をもらったフリをさせてもらってます。神罰は勘弁して下さい)


 僕は感謝の祈りではなく、お詫びの言葉を心の中で呟く。

 ラ・テール様が無反応だったので、イリキーヤ様にもスルーされるだろうと思っていた。


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