sideウォルクリス02
目が覚めたら、また「鷹野翔太郎」というオジサンになっていた。
身体の節々が軋んで痛い。
(動かしたら、ほぐれるかな?)
僕は日課の素振りを試してみた。
翔太郎の家には、剣が無い。
記憶によれば、「日本」という国には「銃刀法」というのがあって、ほんの一部の人以外は「拳銃」「ライフル」「刀剣類」「クロスボウ」などの殺傷武器を持つことができないらしい。
僕は素振りに使えそうな棒を探した。
(あ、これを代わりに振ってみよう)
玄関へ行ってみると、傘が立てかけてあった。
僕の国では、傘を持っているのは貴族様だけだ。
傘は日よけとして使うものだと思っていたけれど、この世界では雨具としても使うらしい。
折りたたまれたそれは、素振りに良さそうな長さだった。
(これを剣の代わりに振る人は割と多いのか……じゃあちょうどいいかも)
翔太郎の記憶によれば、この国の子供たちは傘を剣代わりに振り、必殺技の名前を言ったりするらしい。
僕は必殺技は無いから、普通に振っておこう。
「……あ」
傘を振っていたら、何かに当たった。
パリンと割れる音がする。
振り返ったら、「幸福の木」の鉢植えが床に落ちて割れていた。
(うわぁ、どうしよう!)
僕は慌てて袋を探し、鉢植えを袋に入れて、翔太郎へ「ごめんなさい」と書いたメモを添えた。
翔太郎の記憶かあることや、彼の身体に入っているおかげか、僕は日本語の読み書きが可能になっている。
(怒られるかなぁ……まだ会ったことないけど)
弁償したいけど、この身体も持ち物も全部翔太郎のものだから。
この世界で弁償できるものは無かった。
僕は傘を元の場所へ戻し、翔太郎の勤務先へ向かった。
今日の仕事は駐車場の見張り。
小屋の中で座ってじっとしてると、眠くなってしまう。
「鷹野さん」
声をかけられたのは、眠気覚ましに小屋の外に出たときだった。
振り向くと、商店街でひったくり犯を逮捕した警官の1人がいた。
「先日は犯人逮捕に御協力ありがとうございました。署長から感謝状が贈られることになりまして、都合の良い日をお聞きしたいのですが」
「今日なら。それ以外は、予定が分かりません」
「では、お仕事が終わった後にいかがでしょうか」
「分かりました」
僕は多分、夜に眠ったら元の世界へ戻る気がしたから。
こちらに戻ってくる翔太郎の予定は未定だから。
急だけど今日にしてもらった。
コンビニのお兄さんと二人で表彰されて、筒形の賞状入れを渡されて、「写真」を撮られて……
なんだかよくわからないうちに全部終わった。
翔太郎の記憶があっても、驚きと困惑だらけだよ。




