ep18:和風きのこパスタ
午後の見回りから帰った僕は、夕食の準備を始めた。
今夜の夕食は、シメジとマイタケを使った和風パスタにしよう。
大袋で貰った鰹節薄片は、トッピングに使える。
「手伝いに来たぞ~」
「ありがとう。じゃあ、パスタの生地を捏ねてもらえる?」
「任しとけ」
見習いメンバーが厨房に入ってきた。
ちょうどいいから、彼らに生地を捏ねてもらおう。
見習いメンバーが作るものは、先輩たちと違ってダークマターにはならないからね。
「お、みんな上手いね」
「途中まではナンを作るのと変わらないからな」
農村の子供は、小さい頃からナン作りを手伝う。
アウラウダもラフォルムもティミッドも、農家の子供だ。
捏ねる作業には慣れていた。
(先輩たちの調理技術が壊滅的なのは、貴族の子息だからかな?)
手際よく捏ねる三人を見て、僕はそんなことを思った。
正規の騎士たちは、ほとんどが貴族家出身と聞いている。
家督を継がない次男や三男が騎士になることも多いらしい。
「次はこれを1本ずつ引っこ抜いてバラバラにして」
生地を休ませている間に、具となる茸の下ごしらえにかかる。
シメジとマイタケは石づきから一本ずつ引き抜けば、包丁いらずでバラせて可食部分が増える。
引き抜く作業も、三人に手伝ってもらった。
ソースの味付けは、バター醤油風味で。
ブゥールと呼ばれるこの国のバターは、日本のスーパーで売っているものより濃厚で美味い。
鰹の血は、水で溶くと鰹だし醤油そのものだ。
シメジとマイタケはブゥールを溶かした中華鍋っぽい鍋に入れて、強火でサッと炒めて旨味を閉じ込め、仕上げに鍋肌から水溶きした鰹の血を回し入れる。
「アウラ、そろそろパスタを茹でてもらえる?」
「おっけー」
「ラフィ、茹で上がったパスタと、このソースを混ぜ合わせて」
「あいよっ」
「ティミー、鰹節薄片をトッピングしたらカウンターに運んで」
「はーい」
僕が指示すると、三人が手際よく作業してくれる。
料理を通して、見習いメンバーのチームワークが良くなったかもしれない。
香ばしい匂いが漂う頃、先輩たちが食堂に入ってきた。
「おお! また美味そうなパスタだな」
「茸を貰ったんだって? シメジとマイタケか。バターと合わさって良い香りだ」
「スープに入ったパスタも美味いが、ソースを絡めたのもいいな」
先輩たちも見習いメンバーも、フォークに麺を巻き付ける食べ方が上手になっている。
麺が無かった世界の住民とは思えないくらい、器用に巻けるようになった。
僕としては、今後ラーメンやうどんを作って食べるために「箸」を広めたい。
出来上がった和風きのこパスタを騎士団メンバーで食べていたら、領主様が匂いにつられて見に来た。
お城の中にいて気づくなんて、彼の嗅覚はどうなっているんだろう?
「ウォルクリス! 私にもそれを作れ!」
「あ、はい」
僕は再び、お城の厨房に連れていかれた。
これからは宿舎で新たなメニューを作る前に、お城で作った方がいいかもしれない。




