ep135:国王陛下の手紙
領主様、ベルさん、リュンヌ様と話を済ませた僕は、国王陛下の執務室へ向かった。
「陛下、ウォルクリスです」
「入りなさい」
護衛が開けてくれた扉の向こうに、いつもの陛下の姿がある。
「リシュ城なら問題ない」
……やっぱり、説明要らなかったよ。
「なんならウォルの故郷へ連れて行ってもいいのだぞ?」
「いえ、それはさすがに……」
……陛下のリュンヌ様愛は、一体どうなっているんだろうか?
「リュンヌは自由に羽ばたける子だ。余はあの子を政略の駒にする気は無い」
陛下の言葉に、リュンヌ様への深い愛情が見える。
いいな、こういう王様。
ラノベ好きのオッサンは、貴族や王族といえば政略結婚が常だと知っている。
第二王女は有力貴族や他国の王族に嫁がせるものだと思っていたけど、陛下はリュンヌ様の気持ちを優先するつもりらしい。
「ウォル、お前はリュンヌをどう思っている?」
……遂にきた。
リュンヌ様の想いは知ってる。
陛下も気づいているだろうとは思ってた。
っていうか、陛下まさか平民との交際も許す気?
しかし、今ここにいるのは本物のウォルクリスではなく、入れ替わったオッサンだ。
迂闊なことは答えられない。
「僕は平民です。王族や貴族の方々は仕えるべき存在で、リュンヌ様のことは守るべき大切な人だと思っています」
これはウォルクリスの気持ちというよりは、父親の教えだ。
騎士隊長だった父親は、騎士として必要な知識の他に、平民としての立場も教えていた。
「あいつの教えか。顔は似てないが、そういう真面目なところは似ているのだな」
「陛下は、僕の父を知っておられるのですか?」
懐かしむように陛下が言う「あいつ」とは、間違いなくウォルクリスの父親のことだろう。
本人が多くを語らないのでウォルクリスの記憶には無いが、もしかしたら国王に覚えてもらえるくらいの活躍をしたのかもしれない。
「やはり詳しくは話していないのか。お前の父は、侯爵令嬢時代のミュゲの護衛騎士を務めたのだよ」
「え……?」
……結婚前の王妃様に仕えてたの?!
息子、全く聞いてないし。
貴族を護衛したような話はあるものの、誰かまでは知らなかった。
「ミュゲはお前があいつの子とは知らない。知れば父親に会いたがるかもしれんな」
陛下はフッと笑みを浮かべると、執務机の引き出しから便箋と封筒を取り出した。
便箋に羽根ペンでさらさらと何かを書き込むと、封筒に入れる。
仕上げに封筒の封じ目に溶かした蝋を垂らし、金属印を押し付けた。
「里帰りの際に、これを父親に渡せ。読むくらいはするだろう」
「分かりました」
僕は陛下の手紙を受け取り、マジックバッグに入れた。




