ep136:帰りの馬車の中
ガラガラと車輪が回る音がする。
パカポコと馬の蹄の音がする。
僕、アウラウダ、ラフォルム、ティミッドの四人は騎士団の馬車に乗り、故郷への道を進んでいた。
リシュ領から故郷の村までは、馬車で一週間ほど。
着いた後はしばらく家の手伝いなどをして過ごし、家族と話して今後の準備に入る予定だ。
アウラウダは領主様にお願いして、リシュ騎士団の調理係に就職が内定している。
ラフォルムはそのまま実家を継ぐだろう。
ティミッドは行商人になることを親に認めさせるところからかな。
「帰ったらスープパスタ作ろうかな」
「それいいな」
「うんうん、ビックリするよきっと」
三人はサンドイッチを頬張りつつ、料理の話で盛り上がっている。
僕がレシピを教えた料理は、全部しっかり覚えているらしい。
村に帰ったら、家族にサプライズ料理を振る舞うだろう。
(侯爵令嬢と護衛騎士かぁ……)
僕は幌が開いている部分から外を眺めて、ボンヤリと考え事をしていた。
陛下からウォルクリスの父親の過去を聞いた後。
翌朝入れ替わって目覚めたウォルクリスは、父親が王妃様の護衛だったと知って驚いていた。
王妃様とは何度か会っているが、ウォルクリスは母親似なので気付かれなかったんだろう。
(ラノベだと恋愛に発展することがあるけど、実際どうなんだろう?)
……王女様に想いを寄せられる料理人なら、ここにいるけど。
ウォルクリスは、多分リュンヌ様の気持ちに気づいてない。
記憶の共有は「見た」「聞いた」「行動した」内容を知る程度なので、僕がリュンヌ様の気持ちに気づいていても、ウォルクリスは気づかないなんてこともある。
いっそメモでも書いて教えるか?
でも、それで変に意識してギクシャクされるのも困るなぁ。
「なあ、ウォルは帰ったら何作る?」
「え?」
アウラウダに急に話しかけられて、僕はキョトンとしてしまった。
「なんだよボーッとして。マジックバッグに食材いっぱい入れてきたんだろ?」
「うん」
食材なら山ほど持ってる。
リシュ領を出る前に街へ土産を買いに行ったら、あちこちの店で食材を頂いてしまった。
エルフの森のみんなにも里帰りの話をしたら、薬草や食材を貰ったし。
妖精たちからは久々に木の実シャワーを浴びせられたから、木の実売りの屋台ができそうなくらいだ。
「で、何作る? 俺も食べに行っていい?」
実家が同じ村のアウラウダは、僕の料理も楽しみにしているらしい。
「そうだなぁ、照り焼き丼でも作ろうか」
「お! いいね!」
「えーズルイ」
「僕たちも食べに行っていい?」
照り焼き丼の話をしたら、何故か隣村の二人まで来ることになった。




