ep134:雉(フェザン)と白葱(ポワロー)の照り焼き丼
僕はペンダントの転移機能でフルール城へ行くと、自分の調理場でリュンヌ様の昼食作りを始めた。
ベルさんが白葱をお裾分けしてくれたので、せっかくだからこれを使おう。
マジックバッグに雉肉があるから、照り焼きが良さそうだ。
材料は、ヴィアンド・ドゥ・フェザン(雉肉)、ポワロー(白葱)、ル・サン・ドゥ・ボニート(鰹の血)、シュクル・ミュスコヴァド(黒砂糖)、リ・ロン(長粒米)、オー(水)。
雉肉と白葱を串に刺す。
粉末状の鰹の血と黒砂糖をお湯で溶いて、照り焼きダレにする。
鍋でたっぷりの湯を沸かし、長粒米を7~10分程度茹でる。
少し芯が残る「アルデンテ」の状態でざるに上げて、湯を切ってから鍋に戻す。
弱火で水分を飛ばしながら5~10分ほど蒸らす。
蒸らしている間に、炭火で雉肉と白葱を焼いてタレに浸し、また焼く。
こんがり焼けたら串からはずし、炊き上げた長粒米を盛った丼にトッピングして、タレをかけて完成。
「私、この甘辛いソース大好きよ」
「【テリヤキダレ】といいます。肉にも魚にも合うんですよ」
リュンヌ様は照り焼きが好みらしい。
ベルさんに伝えておこう。
僕はリュンヌ様と共に食事を終えて、お茶を飲んでいるときにリシュ領行きの話をしてみた。
「リュンヌ様、僕が里帰りしている間、リシュ城に滞在しませんか? 唐辛子信者もあそこまでは来ませんから」
見習い騎士の任期や、一度帰省することは、既に話してある。
フルール城や王都の料理人は、ラシスムの言いなりで料理に唐辛子を入れようとすることも。
唐辛子アレルギーのリュンヌ様を守るには、リシュ城滞在が一番だ。
「領主さまの許可はもらいました。お部屋を用意してくれるそうですよ」
さっき領主様にはお願いしてきたから、今頃は侍女たちが準備にかかっているだろう。
リュンヌ様は、ひじ掛け付き長椅子の背もたれに背中を押し付ける。
ちょっと俯きながら、傍らに置いてあるぬいぐるみを引き寄せて抱き締めた。
分かってはいたけど、いざとなると寂しいんだろうな。
夏からずっと毎日一緒にいたからね。
「ウォル、里帰りが済んだら、迎えに来てくれる?」
「はい。勿論です」
「じゃあ、クリスと一緒にリシュ城で待ってる」
俯いてぬいぐるみを抱き締めたまま、リュンヌ様は言った。
ぬいぐるみのクリスは、今やすっかりリュンヌ様の心の支えになっている。
里帰りについてくるとか言い出さなかったのは、クリスがいるからかもしれない。
リュンヌ様のリシュ城滞在、これで本人の了承も得た。
あとは陛下に報告……というか、許可してくれるかの確認だな。




