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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep133:リシュ領なら安心

「領主様、御相談があります」

「ん? どうした?」


 リシュ城の執務室。

 もはや僕の出入り口と化した隠し扉を開けて、領主様に相談をもちかける。


「僕が里帰りしている間、リュンヌ様を唐辛子信者から守ってもらえませんか?」

「唐辛子信者? ああ、あの馬鹿か」


 少し話しただけで、領主様は状況を理解してくれた。


「よかろう。ここに王族の方が泊まられるのはよくあることだ。リュンヌ様のお部屋を用意しておこう」

「よろしくお願いします。フルール城よりもこちらの方が、リュンヌ様には安全だと思います」

「ここならあの唐辛子馬鹿も手下も来ないから安心しろ」

「ではベルさんにもお願いしてきますね」

「うむ」


 僕は執務室を出て、ベルさんがいる厨房へ向かった。

 厨房へ行くと、ベルさんは何かを見つめて集中している。

 邪魔しちゃ悪いと思い、僕は声をかけずにその場で待機した。


 ベルさんの視線の先には、二十本ほどの白葱たちがいる。

 白葱たちは二本ずつペアになって寄り添い、クルクルと回っていた。


(……なんかあの動き、社交ダンスみたいだな)


 僕は白葱たちの動きを見て、貴族たちが踊るダンスを連想した。

 エルフの城の調理場で見た白葱ダンスとは、動きが全然違う。


 ベルさんが、右手の人差し指を白葱たちに向ける。

 魔法が発動して、人差し指の先から細くて長くて鋭い木属性攻撃が放たれた。

 それは、僕が使った木属性魔法と同じだ。

 白葱たちは二本ずつ次々に貫かれ、円状になった細い木に連なって倒れた。


「ふふん。私だってこれくらいできるんだから」

「さすがですベルさん」

「んひゃぁっ?!」


 勝ち誇るベルさんに声をかけたら、なんか変な声出して驚かれてしまった。

 急に声かけたの、悪かったかな?


「うううウォルくん、いつからいたの?」

「ベルさんが魔法を発動するちょっと前からですよ」


 ベルさんは何故か真っ赤になって焦っている。

 僕はついさっき来たばかりだと告げた。


「そ、そう。何か御用?」

「はい。リュンヌ様がここに滞在するので、お食事の用意をお願いしに来ました」

「ウォルくんは?」

「僕は見習い期間が終わるので、村へ帰るんです」

「そっか。もうすぐ一年だものね」


 呟くように言ったベルさんは、どこか寂しそうに見えた。

 僕の脳裏にも、ベルさんとの日々が浮かぶ。

 ハーフエルフの彼女は五百年近くを生きるから、一年なんて一瞬かもしれない。


「正規の騎士になれても、なれなくても、また会いに来ますよ。転移のアイテム持ってますから」

「そうね。ウォルくんはいつでもここへ帰って来られるものね」

「僕が帰るまで、唐辛子信者からリュンヌ様を守ってあげて下さい」

「分かったわ」


 リュンヌ様のお食事は、ベルさんに任せておけば安心だ。

 あとはリュンヌ様に話して、準備を始めよう。

 陛下に許可をもらいに行かなきゃ。

 多分もう知ってるだろうけどね。

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