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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep130:踊るぬいぐるみ

 エルフの森では、植物が意思をもって動くらしい。

 それは、葡萄と白葱でよく分かった。

 お城と一体化してる世界樹とも話したことがあるからね。


 ……しかし。


 ぬいぐるみが動くとは聞いていない。


「見て見て、クリスは踊りが上手なのよ」


 鴨と白葱のスープをサロンまで運んでいったら、楽しそうに笑うリュンヌ様がいた。

 彼女の足元で踊っているのは、さっきエウェル様が作ったぬいぐるみだ。

 ウォルクリスをデフォルメしたフェルト人形みたいなやつが、キレッキレのダンスを踊っている。


「クリス?」

「この子の名前よ。ウォルクリスの分身だからクリスにしたの」


 おまけに、名前も付けられている。

 紹介されたクリスが、ポーズをキメてこっちを向いた。


「さすがエルフの森、ぬいぐるみも動くんですね」

「魔力を込めてたからね。踊るくらいはするわよ」


 呆然とする僕に、クスッと笑うベルさんが説明してくれた。

 確かに魔力は提供したけど。

 踊り出すとは聞いていない。

 踊り終えたクリスは、軽やかに跳躍してリュンヌ様の膝に乗る。

 リュンヌ様が嬉しそうに抱き締めて、ぬいぐるみの頬にキスをした。


「お待たせしました。カナール白葱ポワローのスープでございます」


 僕はそれを見なかったことにして、マジックバッグから鍋掴みを取り出して装着する。

 出来立てアツアツのスープを鍋ごと取り出して、サロンにある配膳ワゴンの上に置いた。

 壁際で待機していた侍女たちがサッと近づき、配膳を手伝い始める。

 僕は配膳を侍女たちに任せて、壁際へ行って待機した。

 ベルさんが僕の隣に並ぶ。


「あら、ウォルくんもベルもそんなところに立ってないで、こちらへいらっしゃい」

「ほら、ウォルの席はここよ」

「「はい」」


 エウェル様とリュンヌ様に呼ばれて、僕はリュンヌ様の右隣の席に着く。

 ベルさんはエウェル様の隣に座った。


 チラッと見れば、ぬいぐるみがよく見える位置にある。

 ぬいぐるみは、リュンヌ様の左隣の席で大人しくしている。

 リュンヌ様がスプーンで掬ったスープをぬいぐるみに向けると、スーッと消えるのはどういう仕組み?

 言葉も分かるみたいだし。


 このぬいぐるみ、リュンヌ様に婚約者ができたときに問題起きないか?

 リュンヌ様がいつか輿入れするときはどうするんだろう?

 安眠グッズとして嫁入り道具に入るんだろうか?

 婚約者や結婚相手が、他の男をモデルに作られたぬいぐるみを嫌がらないかな?


 オッサンはリュンヌ様とぬいぐるみの今後が気になってしょうがない。

 気が早いと言われるかもしれないが。

 王族や貴族は成人前に婚約者が決まることが多いから心配だ。

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