ep124:高級寝具とリュンヌ様
異世界で過ごす日。
まだボンヤリしているときから、何かがいつもと違う感じがする。
いつも寝ている宿舎のベッドよりも、背中に感じる敷布団のクッションが柔らかい。
まるで、長年使いこまれて煎餅のように薄くて硬くなった敷布団から、新品同様フカフカのウール敷布団に取り換えられたような快適な弾力性だ。
掛布団も、古い毛布から新しい羽根布団に変わったように、軽くて肌触りが良い。
素晴らしいクッション性と肌触りに、思わずそのまま二度寝したくなる。
……が。
(ん? 左腕に何か乗ってる……?)
身体の左側に違和感。
左腕に視線を向けた直後、僕は固まった。
(え?! なんで?!)
僕の隣に美少女が寝ている。
知らない子ではない。
よく知ってる子だ。
ツヤツヤサラサラした、白金色の長い髪。
シミなんて一つも無い、きめ細かくて滑らかな白い肌。
幼さを残しながらも美しい、西洋の人形を思わせる顔立ち。
(なんでリュンヌ様が添い寝してるんだ?!)
毎日食事の用意をしたり、お茶を淹れたり、異世界で一緒にいる時間が最も長い女の子が添い寝している。
僕の左腕を枕にスヤスヤと。
眠っていても美しく整った顔は、安心したように穏やかな表情を浮かべていた。
(どうしてこうなった?!)
驚きのあまり、一気に目が覚めた。
視線を巡らせてみると、視界に入るものも宿舎とは違う。
ベルベットに銀糸の刺繍が施された天蓋が見える。
布団の肌触りがいいのは、カバーにシルクに似た滑らかな布地を使っているからか。
寝台の高さも違っていて、宿舎のものよりも高い位置にマットレスが配置されているようだ。
王族が使うような高級ベッドだが、デザインはリュンヌ様がいつも使っているものとは違う。
(……リュンヌ様におねだりされて、添い寝した……だと?)
ハッキリ目が覚めた後、昨日のウォルクリスの記憶が流れ込んでくる。
リュンヌ様の健康状態が良くなり、年齢通りの体格に成長したので、新しいベッドを注文したことは知っている。
そのベッドが、昨日届いたらしい。
リュンヌ様は慣れないベッドが落ち着かなくて寝付けないからと言って、ウォルクリスに添い寝を頼んだ。
恋愛に疎くお人好しのウォルクリスは、その願いを聞き入れて昨夜一緒にベッドに入ったらしい。
彼は五人兄弟の真ん中で、姉や妹と一緒に寝ることもよくあったので、女の子に添い寝することに全く抵抗が無かった。
(おいおいおい、なんで止めないんだよ、護衛騎士たち?!)
リュンヌ様の専属護衛騎士は二人いる。
イムパスさんとエバイユさん、どちらもまだ二十代くらいの若い騎士たちだ。
彼等はリュンヌ様の就寝時は、いつも控室に待機している。
基本的にリュンヌ様の意思に逆らうことはしないが、これはさすがに止めた方がいいんじゃない?
彼等も望まれたら添い寝するのか?
それとも、ウォルクリスなら変な下心を持たないから大丈夫、とか思われているんだろうか?




