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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep82:ベルさんのお母さん

 王妃様とリュンヌ様にお茶とお菓子をお出しした後。

 僕はペンダントの転移機能でリシュ城の隠し部屋へ移動した。

 普通に隠し扉(本棚)を開けて出る。

 もうこれ全然隠れてない隠し扉だよな。


 領主様は、書類にペンを走らせながら振り返らずに言う。


「ウォルか。ベルが用事があると言っていたぞ」


 用事ってなんだろう?

 また宴の買い出しかな?


「分かりました。プリンを作るついで御用を聞いてきます」


 とりあえず厨房へ行こう。

 僕の返事に食べ物らしき単語を聞いた途端、領主様は目を輝かせて振り返った。


「私もすぐ行く」

「はい」


 もはや馴染のやりとり。

 今日も領主様は壁際で新作を待つのだった。


 茶碗蒸しが作れたら、プリンも作れる。

 出汁の代わりに牛乳を、塩などの調味料を砂糖にしたらプリンになる。

 ちなみに卵2個あたり、牛乳250~300ml、砂糖大さじ3くらいが標準的な比率だ。

 滑らかさ、柔らかくするなら牛乳を増やす。

 牛乳を卵の4倍量にすると、トローリとろけるプリンになる。

 加熱方法は茶碗蒸しと同じでもいいし、オーブンに入れて焼きプリンにしても美味しい。



 ◇◆◇◆◇



「ウォルくん」


 リシュ城の厨房。

 小柄なベルさんが、大きくて睫毛が長い緑の瞳で、僕をじっと見上げてくる。

 もはやこのパターンは慣れっこだ。


「えーと、買い出しですか? 何かお手伝いですか?」


 苦笑しながら聞いてみた。

 事前に領主様から「ベルが用事があると言っていた」と聞いてたし。

 まあ驚くことはないだろう。


 そんな僕の予想を超えてくるのが、ベルさんという人だった。


「ママに会ってくれる?」

「へ?!」


 想定外の「用事」に、僕は変な声出ちゃうし、壁際では領主様が椅子からズリ落ちかけた。

 プリンの試食をしていたジャックさんは一周回って落ち着いたのか、無言で真顔でプリンを食べ続ける。


 ママとは?

 言葉通りならベルさんのお母さん?


「ママがね、ウォルくんに会ってみたいって言ってるのよ」

「えーと……ママというのは、どちら様?」

「エルフの森にいる、私の母よ」


 ……間違いなくお母さんだったー!


「ベルさんのお母さん、ここに来るの?」

「ううん。ウォルくんが行くの」

「エルフの森に?」

「そう」


 ベルさんのお母さんが何故会いたがってるのかは、なんとなく分かる。

 多分イリキーヤ様の加護とか、珍しい料理とか、そういうのに興味があるんだろう。

 しかし、エルフの森ってどこ?

 日帰りで行けるの?

 っていうかリュンヌ様のお夜食を作るから、それまでに帰らなきゃだけど。


「エルフの森って二時間くらいで行って帰ってこれます?」

「大丈夫よ、すぐそこだから」


 ……田舎の人の「すぐそこ」は遠いからなぁ。

 まあいいや、いざとなればペンダントの転移機能でフルール城へ帰ろう。


「じゃあ、ちょっとだけお邪魔します」


 こうして、僕はちょっとそこまで感覚でエルフの森へ連れて行かれるのだった。

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