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53.海軍大将(2)

「会う理由はなんと?」一呼吸あってから、立花が訊いた。


「会って、感謝をのべたいとのことだ。マフィア内部に潜伏していたエージェントを救出したんだろ?」


「……まあ、成りゆきでね」立花は石倉の話にのっておいた。


「で、どうする?」


「海軍大将とやらの顔を一度は拝んでみたいものですが、軍と仲良くすると、署内で嫌われやしませんか?」


「心配するな。人選をかなり絞った最短ルートだ。警察庁長官からヒョウゴ県警本部長、コウベ署署長、そして私だ。他に漏れる心配はない」


石倉はさらに、お前はすでに嫌われ者だろ、とつけ加えて笑った。


「そうですか……でも、本当に海軍大将から電話があったんですか? 誰かがなりすましたイタズラとかではないですか?」


「長官と富士大将が、直接テレビ電話で話したと聞いているぞ。というか、何をわけのわからん心配をしてるんだ」


「いや、まあ、驚いたものですから」


「で、どうするんだ?」


「会いはしませんが、御厚意は承りました、とお伝えください」


「……そうか、わかった。では、説教の続きだ。お前は今っ! どこでっ! なにをして――」


翠がプツリと電話を切った。驚いた立花は翠を見上げる。


「ピンクならこの辺りで電話を切ったんじゃないかと思いましたの。問題ありました?」


「いや……特には……」


「さて! これで疑いは晴れたよねっ」彩子は陽気な声でいい、肩をすくめた。


「そうだな」京子は銃を下ろす。「ブルー。イエロー。もう楽にしてくれていい」


「はーい」由紀が手をあげてふり返り、立花の元に駆けよる。「パパぁ、大丈夫だった?」


由紀の甘ったるい声を切り裂くように銃声が響き、立花は目を見開いた。


そしてすぐに、手足を縛っていた強化ロープがするりと落ちた。立花はふり向き、真理亜を睨む。


当たったらどうするんだ! との言葉は呑み込んだ。弾丸を撃ち落とす真理亜には、無意味な仮定なのだ。


「さてさて、誤解も解けたところで、情報交換しましょう。まずは、リクレンジャーさんよりも前に動いていた私がまとめるわね」


そう前置きして、彩子が話し始めた。


最初の事件は、三ヶ月前まで遡る。アマガサキで護送中の殺人犯が殺された。警察側に大きな不手際があったことから、警察が隠蔽してしまい公にはなっていない。


次は五日後、殺されたのは麻薬の密売人だ。警察の鑑識が遺体に残っていた化学物質を分析し、海軍の銃器が使用された可能性が高いことを突き止めた。


それを察知した海軍が、調査に乗りだすこととなる。


「ちょっと待て! 鑑識の情報が、なぜ海軍に漏れる!?」立花が割りこんだ。


「海軍諜報部をなめないでほしいわね。あと、警察はもう少し鑑識の給料を上げたほうがいいわね」


立花は反論の気力なく、口を閉じた。彩子は一呼吸ついてから続けた。


二人目の犠牲者から三日後、これまた警察の失態で無実になってしまった連続殺人犯が殺された。


それからはしばらく、凪の期間が続く。その間に海軍諜報部は『クロガネ』の関与をあきらかにし、『聖なる灯り』との関連性もつきとめた。


さらに『クロガネ』との接触にも成功し、『クロガネ』の単体暴走ではなく、『ママ』の存在も明らかになった。あとは、『ママ』の正体をつきとめ、『クロガネ』にはミサイル一発。それで解決のはずだった。


だが、ママの捜索は難航した。


海軍諜報部は監視体制を強化し、四人目の被害者が現れるのを待った。


被害者を待つなど非人道な選択ではあるが、海軍は『ママ』の捕獲を最優先とした。海軍のセキュリティに穴があっては、『クロガネ』どころか核のスイッチが第三者に握られる可能性もゼロではないのだ。


しかし、次の事件はなかなか起きなかった。


「さてここでクイズです。どうして『クロガネ』は次の事件を起こさなかったのでしょうか?」


「相馬さんとクイズを楽しむつもりはない」京子は冷たくいい放つ。


「あら、残念」彩子は舌をだしてから、答えを口にした。「弾切れよ」


「もしかして、海軍が『クロガネ』に補給したというのか!」立花は声を荒げた。


「そーよ」彩子は悪びれる様子もなく頷く。


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