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51.追求

「了解、グリーン。では一つ目の質問。三上さんをレッドと呼んでいたようだけど、隊員じゃなくて総帥じゃなかったっけ?」


「良い質問ですわ。三上総帥閣下は、レッドも兼任なさってます。今の場は、総帥よりもレッドと呼ぶのがふさわしいと判断しましたの」


「なるほどね、では二つ目。どうしてここがわかったの? 発信器を持っていたとしても、海軍肝いりのジャミング装置が動いていたはずよ」


「発信器なんて必要ありませんわ。だって、コウベにあるほとんどの監視カメラは、ずーとピンクを追っていたのですから」


「どういうことだ!」ギョッとして立花はいった。


「少し前に、潤一郎の遺品が届きましたの。自分が死んだらそうなるように手配していたみたいで、そのなかにはピンク追跡プログラムもありましたわ。潤一郎がいなくなってからも、ピンクの行動をすべて記録していましたの。運が良かったですわね」


「いまいち状況が見えないわね。とりあえず海軍のジャミングが破られたわけではないようだから一安心」彩子は肩をすくめた。


「あなたに安心している余裕などない!」京子が尖った声をだす。「相馬彩子。あなたは海軍エージェントの立場を利用し、『ママ』と称して傀儡とした人体兵器『クロガネ』で、殺人を繰り返した。間違いないな」


「はあ!? 間違いだらけよ!」彩子は顔をしかめた。「だいたい証拠はあるの、証拠は」


「『聖なる灯り』に書き込まれる前から、『クロガネ』に殺された清宮に接触していた」


「それは刑事さんにもいったけど、清宮が見栄をはるための嘘よ。でもだいたいねー、書き込み前に清宮にあったからって、どうだというのよ。不思議だ、妙だ、っとはなるけど、私が『ママ』だっていう証拠にはならないわ!」


確かにそれだけでは、有罪を勝ちとることはできない。『ママ』であることを明確に証明する必要がある。


「だったら、私が生き証人となろう」


「どういう意味?」彩子がいった。立花も同じ思いで、京子の言葉を待った。


「とある人物に呼びだされて倉庫街へ向かった。そこで私は『クロガネ』に襲われ、命からがら逃げだした」


立花は驚き、あらためて京子を見た。たしかに衣服はかなり汚れているが、特に怪我を負っているふうではない。


「えっ? 『クロガネ』に襲われたの!?」彩子も驚きの表情を浮かべた。


「白々しい態度を取るな! 『クロガネ』を呼んだのは、あなただ!」


「あのさぁ、だから何を証拠に……」


「倉庫街のある埋立地に向かう途中、架橋下をとおる船にいるのを見た!」


「うっそぉ! あの一瞬で気づいたの!? 距離も随分あったのに、どんな視力してるのよ!」


「認めるのだな」


「あの近くで船に乗っていたことはね」彩子は小バカにしたように、舌をだす。


「ふざけるな! あの場所を知り、『クロガネ』を動かすことができるのは、『ママ』でもあり『ヒメ』でもある相馬彩子、あなただけだ」


「ヒメッ! 今、姫といったのか!?」立花は声をあげたが、京子は「あとで説明する!」と遮った。


「私が『姫』のはずないじゃん。だって、一番目の一条君を殺したのは私なのよ。三上さんの目の前でね。気づいているのでしょ?」


「たしかに『姫』の部下をアナタが殺すのは道理に合わない」


「でしょ?」


「だったら、なぜあの時間、あの場所で『姫』と会うことを知っていた? あなたが、『姫』だからじゃないのか!」


「違うわ」彩子は、うふふと口元を緩めた。「カフェ・ナカモトで斜め後ろの席にいたアシヤ風マダムを覚えてる? ショッピングモールにいたギャルを覚えている? 三上さんの近くに張りついて、きっちり動向はおさえていたわ。なにせ三上さんは『姫』につながる唯一の手がかりですもの」


京子の表情は固くなった。尾行されていたことが、ショックなのだろう。


それを見透かしたように、「船の上では気を抜いていたけど、それ以外は見事なものでしょ」と彩子は自慢げにいった。


立花は尾行することもされることもあるが、正直まったく気づかなかった。


カフェ・ナカモトでは『人魚』を追う追わないで京子とぶつかったが、『人魚』本人の前でやっていたとはいささか情けない。


「だからといって、あなたが『姫』でないという証拠もない」京子に軟化する雰囲気はない。


「これ以上は、なにをいっても水掛け論ね。じゃあ、こちらも手の内をさらすわ。私はね、お偉い方の特命で動いているのよ。背信の余地なんてないわ」


「誰からの特命だ?」 


一呼吸おいてから、「海軍大将よ」と彩子は答えた。


海軍大将! 制服のトップじゃないか!?


立花は大きく眼を見開いた。


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