表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/48

43.赤ドラの幹部(2)

「そんな、恐い顔すんなよ。あんたが妙な動きしているのは井川の旦那の件なんだろ」


「そうだ。だからチャチャを入れるな。お前らのせいで、俺が追ってるホシに逃げられでもしたら、絶対に許さんぞ!」


「旦那が本気なのはわかった。だが、こっちも事情があんだ。なんせ今回は都市伝説みたいな情報しか集まんなくてよぉ。なんでも、オーガが軍からロボット兵器を調達しただとか、軍が新兵器の実験台にマフィアを殺し回ってるとか。ほっときゃいいものの、ボスや上級幹部たちがえらい心配しててよぉ」


「知るか、ボケ!」


「ムキになるとこをみると、やっぱ旦那はなにか握っているんだな。なあ旦那、協力させてくれよ。それにさあ、セブンフルートはウチ傘下の店だぜ」美沢は視線をコンソールに向ける。「さっきのおねーちゃんから、写真も送ってもらったけど、確かにうちの店の女だ。源氏名はマナ、群を抜く美人だが、欠勤が多くて接客もいまいちだから、あまり人気はない。履歴書での本名はソウマアヤコ、二十一歳の大学生だ」


立花は美沢を睨みながら考えた。


確かにこのままだと源氏名一つ調べるのに手間がかかっただろう。美沢の提案は正直ありがたい。


だが、美沢が善意で協力を申し出ることなどありえない。言葉どおりに情報収集の目的もあるだろうが、あわよくば『軍の新兵器』とやらを、自分のものにできないか画策しているのだろう。


最悪の結末としては、『クロガネ』の指示役である『ママ』が美沢の傀儡とされるか、『ママ』を消して代理をたてられるかだ。


だが、軍を相手にそんなことが簡単にできるとは、美沢も考えていないだろう。ヘタをうてば組織ごと潰されるリスクすらある。


やばいと感じたら潔く撤退するはずだ。その()の判断にすぐれているからこそ、美沢は若くして幹部まで昇りつめたのだ。


「いいだろう。だが、途中で変な色気だしたら、許さんぞ」一応釘は刺しておいたが、効果がないのはわかっている。


「決まりだ!」美沢は指を鳴らした。「じゃあ早速、今日会いに行こうぜ。店は七時からだ。時間になったらきてくれ」


とんとん拍子にことが進む。嫌な予感が脳裏をかすめるも、ここで引くわけにはいかない。


立花はポケットに手を入れ、井川の手錠にふれてから、「六時半にまた来る」と、この場は後にした。



そして言葉どおりに六時半に来たが、今日もアヤコが遅刻したということで、岩橋が運転する高級車でセブンフルートに向かったのは、九時を過ぎていた。


車の後部座席は対面式になっており、間にはテーブルがあってブランデーと氷が用意されている。高そうなドレスを着せられた瑠璃が水割りを作りはじめた。


立花は、美沢から渡されたコンソールで、ソウマアヤコの情報に目をとおした。


戸籍では相馬彩子、幼少はオカヤマの施設で育ち、両親は不明。小中高は施設近くの学校だったが、大学でコウベに出た。


「施設や学校への確認は?」立花がいった。


「やっていない。正確にはやらせていない。誰でも調べられる範囲でとどめている。相馬彩子が軍のエージェントだったら、あまり嗅ぎ回ると勘づかれるからな」美沢は酒をあおってから、目を細めた。「で、相馬彩子とはなにものなんだ?」


「察しのとおり、海軍のエージェントだ」


「井川の旦那にはどう絡む?」


「それがわからないから、相馬彩子に会いたいんだよ」


「あんまりなめんなよ、旦那ぁ! 女はウチの手の中にいるんだ。別のところに連れだして、旦那には車から降りてもらってもいいんだぜぇ!」


「そっちこそ俺をなめんじゃねーぞ」立花は美沢を睨む。


しばらく睨みあっていたが、美沢は引く気がないようだ。瑠璃が泣きそうな顔で首をふる。立花は折れることにした。


女の前で()()格好するために、本当に車から降ろされかねないのだ。女が絡むとどう動くか読めない。


もしくは、そう思わせておくこと自体が、切れ者の美沢のやり口かもしれない。


ともあれ立花は、皮肉や脅しを1ダースほど並べてから、経緯はすっ飛ばして核心のみを話した。


「被害者は『聖なる灯り』というSNSのタレコミ掲示板に書き込まれた井川を含む四人。実行犯は海軍が破棄した人体兵器、通称『クロガネ』。そして、『クロガネ』をコントロールしているのは『ママ』と呼ばれる謎の人物だ。その『ママ』の正体が相馬彩子だと踏んでいる」


「ホントなのか、それ!?」美沢は目を見開いた。「どうやって軍の情報なんてつかんだんだ? どう考えても外部に漏らせない極秘事項だろ」


「ネタ元を明かすわけないだろ」立花はそう突っぱねた。リクレンジャーのことを話すつもりは毛頭ない。


それでも美沢はしつこく訊いてきたが、無視しているとやがて諦めた。今はコンソール片手に、忙しそうに指示を飛ばしている。


どうやら、店に武装させた精鋭を揃えているようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ