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26.ヒロイン救出作戦(1)

リクレンジャーの設備に車はない。皆が乗りこんだ車は京子が普段の生活で足としているレンタカーだ。


発車してすぐに自動運転に切り替えた。あとは翠のコンソールから受信したとおりに、車は立花を追って走る。


十分ほどでスマ湾につき、そのまま埋め立て地エリアに入っていく。Uターンでもしない限り、目的地は近いということだ。


「イエロー。銃は持ってきているな」京子は後部座席の真理亜を見た。


「当然だ」


「現場を見ないかぎりは断定できないが、おそらくバックアップを任せることになる」


京子の言葉に、真理亜は頷いた。


さてさて、陸軍が廃棄した人体兵器はいかなるものか? 京子は心中でつぶやき、少しばかり高揚しているのを自覚した。



立花の車が止まったのは、スマ第三アイランドにあるオフィスビルだ。京子の車も数分遅れてビルに入り、地下駐車場で止まった。


「パパの車をさがさなきゃ」由紀が車を降りて駆けだそうとするのを、翠が止めた。


「お待ちになって。すでにピンクは運ばれてしまったようです。発信器ではこのビルの七十階にいることになってますわ」


「急ごう」京子がいい、四人はビル一階のエントランスまで走った。


ビルの案内図では六十七階までが企業のオフィスで、六十八階から七十階はレストラン、最上階の七十一階は展望階となっている。


「オッサンはレストランでゆったりお茶でもしてんのか?」真理亜が怪訝な表情でいうなか、七十階にあがった。


「ここよりも上のようですわ」翠がコンソールを除きこみながらいった。


「じゃあ、オッサンは展望台で優雅にコウベの街を見下ろしてるわけだな」真理亜の不満げな声を聞きながら、七十一階にあがる。


「うーん、ここよりも下のようですわね……」


「どっちだよっ!」


「一旦、一階に降りよう」京子はいい、まずはエントランスに戻った。


その間も翠はずっとコンソールとにらめっこをしていた。


「あっ、わかりましたわ! ビルについてからのピンクの動きを詳しくトレースしたところ、地下駐車場に降りる手前にあった、搬送業者用の道を進んでいますわ」


「行こう」京子がいい、四人は駆けだした。



搬送業者用道路を行くと、駐車スペースと大型のエレベーターがあった。翠の先導のもと、そのエレベーターも通り過ぎて脇道に入る。突き当たりに小型エレベーターがあり、前にはサスペンダーを着けた極端に肥満の警備員がいた。


「なんのようだっ!」と威嚇の声を荒げた警備員は、一目でまっとうな人種ではないとわかる。


「どけっ!」真理亜が銃を抜いて二発、警備員のサスペンダーの肩紐だけを撃ち抜いた。


ズボンがボトリと落ちて、水玉のトランクスが披露される。警備員は「ひいいっ」と情けない声をあげながら逃げていった。


エレベーターに駆けのる。四人だと窮屈さを感じるサイズで、階のボタンはなく、上と下だけだ。ボタンを押して上にあがる。


エレベーターを降りると、四畳半ほどのスペースがあり、正面にはセキュリティでロックされた扉があった。


窓も灯りもなく、エレベーターのドアが閉まると真っ暗になった。


京子はすぐにボタンを押してエレベーターを開き、由紀にボタンを押し続けるように依頼した。「はーい」と由紀は応える。


「七十階と七十一階の間にある秘密のフロアー、というわけですわね」翠はいいながら、コンソールをさわった。「うん。ピンクはこの扉の先にいますわ」


京子は頷き、その扉を見た。指紋認証パネルのついた、鉄製の扉だ。


「セキュリティの突破は簡単にできることではない。扉を壊すしかなさそうだ」


「どきなっ」真理亜が前に出て、ドアの施錠部分を連続で撃った。


真理亜の連射は正確無比に同じ箇所をとらえ続け、五発目で施錠が破壊された。


なるほど、と京子は頷く。


警備員のサスペンダーの肩紐のみを撃ち抜いたことといい、オリンピック金メダルどころではない、人間離れした射撃の正確さだ。


施錠の壊れた扉を真理亜が蹴飛ばし、勢いよく開いた。


ワンフロアーをまるまる使った部屋の中は薄暗く、がらんとしていた。オフィス机や椅子や棚はもちろんのこと、紙クズひとつ落ちていないようだ。


唯一存在感があったのは、一番奥に見える薄っぺらいドアだ。半開きになって、光が漏れている。


「あそこにいるとしか考えられねーな」真理亜が足を踏み入れた瞬間、天井で大きな虫のようなものが蠢めいた。


「危ないっ!」京子はとっさに、真理亜の腕をつかんで後ろにひっぱる。



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