24.笑えないジョーク
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立花の電話があってから、京子は全員に召集連絡を行った。
十分ほどで翠と立花が駆けつけ、それから一時間ほど遅れて、真理亜と由紀はタクシーで到着した。
真理亜が、足のない由紀を探してから、連れてきたとのことだ。
「このバカ、のら猫を河川敷で飼ってやがった。精神年齢があうのか、十歳ぐらいの子供と一緒にな」
そのような真理亜の愚痴を遮るように、「緊急な呼びだしに応じてくれてありがとう」と、京子は立ちあがる。
「さっそくだが本題に入ろう。事件のあらましについては、ピンクから聞いた内容を皆に送っている。なにか意見はあるか?」
まずは俺からいいか、と手を上げた立花が話しだした。
「総帥には相談したものの、正直、みなを巻き込むつもりはない。海軍の機密事項に迫ることになるかもしれない事案だ、命の危険すらある。俺としては、同じニホン軍同士として、陸軍である総帥から海軍に迫る足がかりを貰えれば、それでいいと思っている」
「あらあら、水くさいですわよ、ピンク。我が隊のヒロインの危機だというのに、ワタクシたちが指をくわえて静観しているとでも?」翠は歌うようにいった。
小バカにされたと思ったのか、立花は顔をしかめてから、視線を京子に戻す。
「先ほどピンクがいった『海軍に迫る足がかり』を具体的にいうと?」京子が訊いた。
「海軍の誰かを紹介してほしい。階級が上なほど……ありがたいが」
「海軍に知り合いはいない」
「陸軍の諜報部でもいい」
「陸軍で……私に協力してくれるものなどいない」
自嘲気味にいいながら、軍がらみの唯一の味方として、一条の存在が脳裏をよぎった。
だが一条は、軍属バイトなどという皮をかぶった正体不明の男だ。どこまで信頼すべきか、まだ判断できていない。
「ピンクはこの事件をどうみている? 今の情報量では多分に推測は入るだろうが、現役刑事の意見を聞かせてほしい」
「海軍の機関砲で殺されたというのは、判明しているだけで三人。テロ犯の有本ならまだしも、海軍が刑事やチンピラを相手にするとは思えない。しかも、うち二人はマイナーSNSの掲示板に、告発というより私怨というべき内容で、名を晒されていた。これはただの偶然ではなく、警察側で調査に乗りだしたとたんに、そのSNS『聖なる灯り』は消された。さらに、警察は海軍から圧力をかけられた。ストレートに考えると、海軍の中に頭のオカシイのがいて、世直しを気取って殺人鬼となった。だったらすぐに海軍内で粛清されるのだろうが、未だに事件は続いている……」
立花は数瞬考えこむ仕草をしてから続けた。
「簡単に粛清できないランクのものが噛んでいる? それとも……他国諜報機関の陰謀か……」
「私は、後者の可能性が高いと考えている。しかも、仕掛けているのは他国諜報機関などではなく、ニホン陸軍の可能性がある」
「陸軍が!?」
「おおやけにはなっていないが、陸軍と海軍の関係は今、史上最悪といわれている。次にニホンが戦争するとしたら、ニホン陸軍対ニホン海軍、などのジョークがあるぐらいだ」
「笑えんジョークだな……」立花は眉をひそめた。
「よろしいかしら」翠が手をあげる。「海軍とのパイプがない以上、『聖なる灯り』を足掛かりに情報収集するしかありませんわよね?」
「そうしたいのはやまやまだが、『聖なる灯り』はすでに消されている。一度はネットにあったものだから、ネットの海をさらえば復元できるのだろうが、それはプロの技だ。しかも、海軍の監視をくぐっての作業となると、コウベ署のIT調査室でも無理だ。もっと上の組織や企業の助けがあればなんとかなるのかもしれんが……俺にはそんな人脈もなければ、彼らを雇う金もない」
「人脈に関しては、心あたりがありますわ。星川潤一郎というのが、その手のことには強いですわよ」
「星川の一族か? 勉強不足ですまないが、どういう人なんだ?」
立花はそう質問したが、京子は潤一郎の名を知っていた。テロ事件があった日に、翠から聞かされていたのだ。
「『有限会社ジュン』の社長兼プログラマーですわ。一般的にはあまり聞かない会社ですけど、誰もが知っているようなソフトやサービスのOEMとして、業界ではかなり有名でしてよ」
「人脈はあっても、そんな業界の有名人を動かす金はないな……。さすがにグリーンのポケットマネーに期待することもできないしな」立花は苦い顔をした。
「ワタクシは財閥一族ですけど、自由にできるお金ってピンクより少なかったりしますのよ」翠はウフフと笑った。「たくさんいるキョウダイのほとんどは、ワタクシのお願いなんてきいてはくれませんが、こと潤一郎に関しては、金銭とは関係なく動かすことができますわ」
「さっきは巻き込みたくはないといったが……」立花は渋面で頭をさげた。「協力してもらってかまわないか?」
「もちろんそのつもりですわよ。ただし、潤一郎は人前に決してでてこないので、なんとかひっぱりだす必要がありますの。ピンクにも協力してもらいますわ」
「もちろんだ。なにをすればいい?」立花は身を乗りだした。




