7話
案の定、というべきなのか。
授業中にも悪口三昧。あのよく漫画とかで見る、机の上の悪口落書きとか。いじめの鉄板ネタ?って感じだよね。よくやるよなぁ。ただ、漫画と違うところがあるとすれば鉛筆で書かれてることくらいかな。
油性ペンで書いたら落ちないからね。流石にビビったのかな。証拠残ることになるし。
……ビビるくらいならやらなきゃいいのに。
というか、こんなのいつの間にかいているんだろう?朝早く来てやってるんだよね、多分。これだけのために早く学校に来るってどうなの?
書いてある文章は私の人権を否定するようなものばかり。苦しいし、悲しいし、すごく悔しい。何もできない自分にむかつく。
でも、むかつくだけ無駄だ。だって、そのうち死ぬし。
私の中にたくさんの負の感情がうまれて、私に訴えかけてくるけれど、それさえもどうでもいいとさえ感じてしまった。こんなことからもあと半年もすれば解放されるって考えたら、ちょっとだけ嬉しく思う。
やっぱり私は「普通」にはなれない。
授業中に、ペアになって発表する時間があった。考えたことを共有してクラス全体に発表……とか、そんな感じの。正直なんであるのかよくわからないようなやつ。生徒の自主性を育む……とかそういうやつ?面倒だし、誰がやりたいんだろ。
隣の知らない人は、大川遊星というらしい。ここまで全く認知していなくてごめんなさい。6年間同じ学校に居たはずなんだけど、3クラスもあると全くかかわらない人って意外といるのよね。
どうせ他の人みたいに、私には話しかけられたくもないのだろうと思って、一人で黙々と作業する。いつもペアワークのときは話しかけても基本無視されるし、ひとりでやったほうが気楽だしね。
「ねえ」
そうしてたら、突然話しかけられた。
「なに」
悪意があるとか、私のことニヤニヤ見つめるアイツらと違って、「普通」だ。なんの変哲もなく普通に話しかけられた。すごくびっくりした。もしかしたら思いっきり顔に出ちゃったかも。
こんなに悪意を込められてない会話って、しかも男子となんて。すごく久しぶりだったから。
「なんで一人でやるの?」
「え?」
おもわず、反射的に聞き返してしまった。何言ってるんだろう、この人……。いやいやいや。だってさ……
「嫌じゃ、ないの?私と関わるといじめられるかもしれないんだよ?」
キョトンとした顔で、当たり前のように大川は言った。
「いや……かも、でしょ?いじめられても気にしないし。石橋さんも楽しいほうがいいよ?」
いいの?私と話して。話しかけてもいいの?
「っい、石橋さんは気持ち悪い。夕菜でいい」
「あ、そう?じゃあ、よろしく夕菜」
大川はちょっと嬉しそうに笑ってた。意味わかんない。なんで嬉しそうなの?
私と関わって嬉しそうにする人なんて、居ないのに。みんな迷惑そうな顔するだけなのに。変な人。
2人でやると作業速かった。私じゃ思いつかないような意見を出してくれて、すごくよかった。
友達ってこんな感じなのかなって
「普通」ってこうなのかなって
ちょっとだけ、私も「普通」に近づけた気がして
嬉しかった




