20話
「お前ら、謝る気ないならどっかいけよ」
「は、なんだよ隆樹!」
「お前だっていつも……」
「そうだよ!」
隆樹の、大声に体が反射的にビクリと震える。それを見てか、大川が心配そうに見てきた。
大丈夫だよ。最後まで戦うって決めたから。一人じゃないから、大丈夫。
「俺だって夕菜をいじめてきた!やっちゃいけないことだってわかってたんだよ!でも、やめられなかった!お前たちも同じだろ!?もうやめようぜこんなの!俺は……俺はもう夕菜をいじめない」
「んだよつまんねーやつ」
「行こうぜ」
そう言って、取り巻きたちはどっかへ行ってしまった。
「ごめんな。夕菜。あいつら二人だけは謝ってこいって言って聞いてくれたんだけどな……」
そうだよね。もっとたくさんいるもんね。他にも、たくさん……。
違うの。今日の目的はそうじゃない。全部、終わりにするためだ。
「隆樹」
「っ、な、なに」
私から話しかけたことに驚いたのか、それとも怖くなったのか。隆樹は下を向いて動かなくなった。
今までと反対だ。まるで、私がいじめているみたい。
頑張れ、私。きっともう、頑張るのはこれで終わりだから。終わらせよう、ちゃんと。
「私も、ごめんね」
「っ、夕菜!?」
隆樹は酷く驚いたようだった。大川は、何も言わず見守ってくれていた。
「許そうとは思わない」
「っ、そんなことは!当たり前で……」
「でも、きっと私も悪かったところがあると思うの」
「……」
隆樹にも、コンプレックスという形で思い当たる節があったのかもしれない。ついに押し黙ってしまった。
もし、あの時もう少しだけ他人を思いやれていたら……。
まあ、もし、なんて考えても今更だけど。」
これは、お互いに。
「隆樹。これで終わりにしよう」
「……好きだったんだ」
「そう」
嬉しい、とは思わなかった。
「俺だけを見てほしかった」
「うん」
「他のやつとは話してほしくなくて夕菜の周りの人間を巻き込んでいったんだ」
「……」
わかってたよ。全部、意図的だったことくらい。
「そんなことしても、夕菜は俺のことなんて見てくれないのにな」
「そうだね」
「今やめたら、どんどん夕菜が離れていく気がして……怖かったんだ。軽い気持ちで始めたはずなのに、どんどんやめられなくなっていった」
「うん」
「今までごめん。許さなくていい。夕菜が楽になるなら俺のことなんて忘れてくれていい」
「忘れないよ。許さないから、忘れない」
「そう……か」
「うん」
「……」
泣かないって決めてたのにな。いつの間にか、私の涙腺は緩んでしまっているみたい。
「私達は、小学校の6年間。たくさんの時間を共にしたんだよ。いい意味ではなかったけど、正直、隆樹とは一番関わったと思うんだ」
「……うん」
「私が『普通』の子なら友だちになれてた?」
「――っ!」
「一緒に笑い合える未来はなかったのかなぁ?」
「夕菜、ごめん!っ、ごめん……」
隆樹の顔が滲んでいく。頬が冷たい。顔が熱い。
ふと、視界が真っ暗になった。あれ、大川の匂いがする。頭から上着を被せてくれたみたい。
「夕菜、お疲れ様」
ぽん、と頭の上に温もりが落ちてきて、余計に涙が溢れてくる。
そうなの。私、頑張ったの。今まで、たくさん、たくさん。
一人で。
「っ、うん」
ありがとう、大川。大好きだよ。
そう出かけた言葉を飲み込んだ。




