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最期に伝えたいこと  作者: うい


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16/23

16話

私は、今日。宣言通り学校に来た。


「おはようっ!」


いつも通り元気に登校班で登校。行きたくない。

 

でも、そんなこと口には出せないから。今日も笑おう。


一日。たった一日だけど、大川に会えなかったことは少しさみしくて。自分でも驚いているくらいだ。


きっと、少しずつだけど、変われているはずだから。


いつか、今よりもう少しだけ、「普通」に近づけたら……。


「あれ」


今日は、あいつらいない。


なんとも言えない気持ちになる。けど、きっと……いいこと。嬉しいこと、なんだよね?


……こんなに簡単に。こんなに、こんなにも簡単に楽になれるの?こんなふうに私も、普通に近づけるなら、どうして今まで何も変わらなかったのかな。


いじめられなくなること。それは、きっととてもいいこととで。今までよりも少しだけ、色んな人と私は関われるようになるだろう。


だけど。


今までの私が、一人で頑張ってきた私がそれじゃあ報われないんだ。




「……おはよう」

 

ドクンドクンと、心臓が大きく脈を打つ。教室に入るとき、挨拶を、してみた。まだ小さい声だけど、日進月歩ってことで、ひとつ。

 

その声に、驚いて私の方を見た子たちもいた。夕菜は、きっと今まであいさつしない人だったんだな。

 

多分私は、いじめが怖くて、自分の殻に閉じこもりすぎたんだと思う。周りがほとんど見えていなくて、人が怖くって。きっとすごく暗い顔をしていたんだろうな。ほんとうに、余裕がなかった。

 

私は、何も見えていなかったんだ。すごく、身をもって実感した。

 

少し遠くを見れば、心配そうにこっちを見る子がいて、隆樹たちにはもう誰も近づこうとしなくって。直接的ではないけれど、私にも味方が付いてきているのだと思った。


本当は……怖くて立ち向かうことはできなかったけど、心配してくれていた人もいたんだと思う。


すべてが敵だと思ってた。誰も、味方じゃないって。誰一人として、わかってくれない、助けてくれないって。そう思ってしまうことは、今でも変わらないけれど。でも、全部が敵じゃなかったんだよ、きっと。


世の中にはたくさん人がいる。そのなかで、私はきっと一部の敵しか見えていなかったんだ。

 

恐怖心は消えたわけじゃないけれど、少しずつでも周りを見渡して前を向こうと思う。


「おはよう、夕菜」


「わっ!」

 

後ろから、登校してきた大川が顔を出した。

 

来てたんだ……。気づかなかった。


「おはよう、大川」

 

言い方を真似して挨拶したら、大川は驚いた顔をした。


「大川?」

 

大川は、驚いた顔のまま言った。


「夕菜が、笑った……」


「なに?そのレアな物見たような反応」

 

思わず、くすっと笑ってしまった。


「いやいやいや。レアだよ!超レア。気が抜けたように笑ってるとこ、初めて見た」

 

あ、確かに。私、今。嘘じゃなくほんとに楽しくて笑ってた。


「確かに、そうかも」

 

大川は、自分のことのように嬉しそうに笑った。


「いつもも可愛いけど、今の方がずっと可愛いよ」


「……え?」

 

か、可愛いって……。

 

顔が熱い。自分の心臓の音が、耳にまで届く。これって……みんなに聞こえていないのかな……。ドキドキしすぎて倒れそう。


「あ、ありがとう?」

 

見ると、大川も真っ赤だった。照れるならなんで言ったん。とは思うけど、嬉しかったし言わないことにした。

 

きっと私は、今までで一番自然に微笑んでいた。

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