↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最期に伝えたいこと  作者: うい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/23

14話

「どうしたの、大丈夫?」


「っ、!」


だ、れ?近所の人?


「どうして泣いてるの?」


「……」


あなたには関係ないでしょう?何も知らないくせに……


「だいじょ…」


「触んないで!」


叫んでから、ハッとした。


この人には、なんの関係もないのに……。


「ごめ、なさ……」


まだ涙が止まらなくて、まともに謝ることもできないまま私は走り出した。


速く、速く。止まったら、もうきっと動けない。


今走るのをやめてしまったら、もうきっと私は楽な方に逃げて、学校に行けない。

 

いつも登校班で通る道。普段は嘘をついて明るくふるまう道。空元気で笑っている道。

 

そんな道を、私は自分に嘘をつかずに通り過ぎた。苦しい、辛いって、思いっきり顔に出して走った。


ほんとはずっと苦しかったの。嘘なんて、つきたくなかったんだよ。

 

前に前に進むことだけ。たったそれだけのことなのに、足を止めそうになる。

 

あと少しだ。なのに、学校に近づくにつれて足が重たくなっていく。疲れもあるだろうけど、心が重たい。苦しい。校門の前で、ついに足が止まってしまった。


行きたくないよ。

 

この後、教室に行くのだろうか。そうしたら……なんて、言われるのか。想像がつく。きっといつもと変わらず暴言を吐かれて、罵られるのだろう。

 

今までと、何も変わらず。


「行きたく、ない」

 

教室に行きたくない。あいつらに、会いたくない……。


きっと、私は弱くなってしまったんだ。無理やり作っていた笑顔の下は、いつもこんな顔だったのかなぁ?


ほんとは、ずっと泣きたかったのかな?


私は……


「夕菜、ちゃん?」

 

驚いて顔を上げると、目の前には彩香先生がいた。


「先生?なんでここに……」

 

誰かが来るなんて思ってもみなくて、きっと今私の声は震えていることだろう。


「校門の前に生徒らしき子が見えたから、来てみたのよ……」

 

そう、なのか。そういえば、保健室からは校門って見えるんだっけ。

 

私は、ここに来たのが綾香先生でよかった、と思った。そしたらちょっとだけ心があったかくなって、安心した。家にいるよりも、ずっと。


自分が今、涙でぐしょぐしょなことに気づいた。


「っ、あ……」


服の裾で無理やり拭う。


人前で泣くのは、弱い証拠、だから。


「そんなにゴシゴシこすらないの!ほら、ハンカチ貸すから」


「あ、りがとう……ございます」


「今日無断で欠席って聞いていたのだけど……」


「……」

 

「教室、行ける?」

 

綾香先生は、遠慮がちに聞いた。

 

そうだ。教室。教室いかなきゃ。


「はい」


けど、隆樹に、あいつらに。会いたくない……。あ、でも、大川には謝らなきゃ。あんなとこ見せてごめん、って。


「……今日は、保健室でお話ししない?」


「……え」


「行かなくてもいいんだよ。夕菜ちゃんはどうしたい?」


「私……っ、でも!行かなきゃ!」


綾香先生をみると、苦しそうに顔を歪めてた。


「行かなくていいよ。気づけなくて、ごめんね……」


「いいん、ですか?」


いいの?逃げてもいいの?


一人で耐えなくて、いいの?

 

「いいのよ。むしろ、よくここまでこれたわね」

 

え……?


「偉いわ。本当は学校にも来たくなかったでしょう?」

 

そうだ。来たくなかった。偉い、って、自分の行動をほめてもらえた。それだけで、私は泣きそうになった。嬉しい、って。


「ありがとう、ございます……」

 

それから一日、保健室で過ごした。


「今日は、なんで来ようと思ったの?親御さんに休みたいって言えなかった?」

 

言って、いいのかな。


「言いました。でも、ダメって言われて」


「そっ、か」

 

綾香先生は、何かを考えこむようにしてから口を開いた。


「明日からも、ここに来る?」

 

その提案に、すごく心が揺れた。

 

教室に行ってもいじめられるだけで、楽しくない。居場所なんてない。きっと、何を言ってもいじめは終わらない。私ひとりの力じゃ、解決できないのだろう。

 

すごく怖い。辛い。考えるだけで苦しくなる。

 

けど……


「明日からは、行きます」

 

大川に会いたい。私に変わるきっかけをくれた、あの人に。


「わかったわ。辛くなったら、いらっしゃい」

 

きっと、私の教室での居場所のなさは変わらないけれど、学校に心強い味方がいるってわかっているから、少しだけ、今までよりも心が軽かった。


もっと早くに……という私の心は、わがまますぎる。


「はい」

 

私は、少しだけ、笑うことができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。