12話
ああ。また地獄の始まり。
「おい、ゴミ。早くこの世から消えてくれない?」
そうだ、私はゴミなんだった。
「なんでまだいるんだよ!」
ごめんなさい。
「お前は、いらない子なんだよ!」
生まれてきて、ごめんなさい。
「ほーら!謝れよ!生きててごめんなさいってよ!」
どうして、私だけ……。
「早く!」
「生きてて、ごめ、なさ……」
「ああ?聞こえねーよ!」
「ごめん、なさい……」
必死に声を絞り出す。
泣くな
泣くな
泣くな
……泣くなってば!!
私はゴミだから、いらない子だから。仕方のないことなんだから。生きていることが罪なんだから。
……本当に?
私だって、普通の。ごく普通の人間なのに。
どうして生きる権利を否定されているの
なぜゴミだと、いらない子だと決めつけられているの
違うの。私は、いらない子なんかじゃ……
ガラッ
教室の、扉が開いた
ただ、それだけだったのに。そこにいた人物を見て、涙が零れ落ちてしまった。
泣くな。泣いたら余計にひどくなるだけ。わかっているのに、どんどん涙が溢れてくる。
「おお、かわ……」
お願い。来ないで。
私のこんな姿、見ないで。
恐怖に顔をゆがめて、ごめんなさいと謝罪しかできない、弱い私なんて見ないで。
強気で、明るくて、元気な夕菜だけを見て……
「夕菜?なん、で、こんな……」
大川の戸惑ったその声で、私の感情はあふれ出した。……今までとどめていた分の反動だろうか。
一度出たら止まらなかった。
「生きててごめ、なさい」
「生まれてきてごめんなさい」
「人の気持ちがわからなくて」
「ごめん、なさい……」
涙があふれだしてくる。
苦しい。
胸がジクジクする。
なんだか、すごく痛いなぁ。
嫌だ。
誰か、助けて……。
「そうだ石橋夕菜。お前はゴミだ!ようやく理解したか?馬鹿なお前には理解が難しかったもんなぁ?」
隆樹の声。近いのに、遠いみたい。
「ごめん、なさい……」
もう何度目かもわからない。
誰に言っているのかもわからないその謝罪は、教室の冷たい空気に溶けて消える。
重苦しい雰囲気が漂う。
押しつぶされてしまいそうだ。
大川はが私を見て……何かを言っているみたい。ごめん、聞こえないや……
「大川、ごめん、ね」
みんな私のこと笑ってた、のに。大川だけは笑わなかった。心の底から苦しそうに、何かを悔やむような顔をして。私よりもずっと苦しそうな顔して、どうしたの?
ああ。もう私は限界だ。いや、もしかしたら、もうとっくに限界だったのかもしれないな。
感情が抜け落ちて、マヒするくらいには。
力が抜ける。前が、見えなくなっていく。
ふわふわして、なんだか深い海に沈んでいくみたい。
最後に見えたのは、大川が駆け寄ってくるところ。
来ないで。傷つけたくないよ。
ごめんね
視界は真っ暗になった。




