98話
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
忌まわしき音が響く。清は目を閉じ笑う。
「やはり、ここにもまた来たな……花化従……そして、姉さま」
「よう、わかりましたでありんすなぁ……。しかし、花紋様の、ありし者の元にわちらがおるのは道理でありんす。なぁ……静さま……」
花化従の背後から白い花断の面をつけた静が姿を現す。
「出来損ないゆえ、半死を作られては厄介。姉の情けとは思わぬか……清?」
静は面をつけているため、表情は読めないが含み笑いが言葉に乗り移っている。
「なっ、半死を作る? 私は姉さまの如く舞を止めたりしない。どこまで私を愚弄すれば気がすむか?」
清は怒りの目で二人を睨んだ。
「怖いですな……静さま。静さまの愚妹はまだ、己が花仕舞師としてすぐれておるとでも思っておられるでありんす。甚だ勘違いも過ぎておるでありんすなぁ……」
「ほんに、ここまで憐れな愚妹とは……半死は舞を止めただけがすべてと思うか?」
静が冷たく言い放つ。
「何を……?」
清が目をつり上げた。
「だからこそ……感謝はされど憎まれることは筋違い……まこと、今度の痣を持つ者は純粋に『孝』と思うておるのか? 『拒』に取り憑かれた者だというのに……それを先ず、伝えに来たのだが……」
「何を? 幸吉殿は純に『孝』を成熟された。断じて『拒』などではない!」
清は拒絶する。静は笑う。
「幼き日の温もりは、今や痛みと化して胸に宿る。名を呼ばれても、返さぬ声。「なぜ」と問われても、瞼は閉じたまま。それは拒むとは、愛を知らぬのではなく、なお愛したいと願った、その果て……その囚われた心をしっかと見届けなければな……すなわち『拒』を……」
静の声が薄気味悪いほど清の心に響いた。
「それにお前は勘違いしとる……我々の仇花霊々の舞の舞は決して花霊々の舞と相反するものではない。今の未練や恐れを否定することなく受け入れ癒し終演向かわせるもの……単に花霊々の舞は形は成熟と言うが、つまるところ舞われる側は試練の舞じゃ……そう考えたことはないか? だからお前は出来損ないなのだ……」
「それこそ……戯れ言。姉さまは一族を追われ、称号を剥奪されたことへの怒りをぶつけているだけだ……しっかと幸吉殿を仕舞ってみせる!」
清は強い言葉をぶつけたが、心が揺らめいていたのがわかった。それは今まで感じた違和感が静の言葉で炙り出されたからだ。
「私が舞う時、姉さまはいつも……側におる。まるで私の舞を邪魔するように……それはなぜ? 私の舞いは不完全だから? そう言えばお雪殿を仕舞った際、お雪殿を半死に落としかけた……完璧に舞ったはずなのに……それはなぜ?」




